資産家の父親の遺産をほとんど1人で相続した独身男性は、勢い勇んで不動産経営に乗り出すも、失速。高齢となった姉は、弟の現状が自分の子どもたちの将来に影を落とすとして怒りが止まりません。解決方法はあるのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、事例をもとに解説します。
15年の月日を経て、再び浮上した相続問題
今回の相談者は、不動産経営をしている70代の山田さんです。15年前、先代である父親の相続をお手伝いしたご縁で、現在保有している資産と、今後の相続の心配事について相談に乗ってほしいと、筆者の事務所を訪れました。
山田さんの父親は農家出身で、自宅のほかに貸家や駐車場、畑、山林など、多くの土地を所有し、その家賃収入で生活していました。
父親の相続人は、今回の相談者の山田さんと、2人の姉の3人でした。姉2人は遠方に嫁いで実家を離れていたため、長男で実家住まいの山田さんが先祖代々の不動産を相続し、責任をもって経営すると強く主張したことで、遠方に暮らす姉2人は引き下がり、遺留分よりかなり少ない代償金を受け取るにとどまりました。
山田さんの父親の財産の大部分は不動産で、納税資金が乏しかったことから、駐車場を1カ所売却して納税資金をねん出し、姉2人の代償金は山林を売却して充当しました。
勇んで不動産経営に乗り出すも、ヘタれてしまった末っ子長男
当時、60代~70代だった山田さんのきょうだいですが、すでに長女は80代、二女と山田さんは70代になっています。
実は山田さんは独身で、お子さんもいません。そのため、山田さんに万一のことがあった場合、遠方に嫁いだ2人姉か、もし姉が先立っていれば、山田さんの甥姪である姉の子どもたち合計5人が、山田さんの遺産を相続することになります。
「実は、父からの不動産の賃貸業を引き継いだものの、正直問題だらけで…」
話を聞くと、貸駐車場は滞納や放置車があるものの強く交渉できず、貸家も隣家の空き家から樹木の枝が伸び、大量の落ち葉などで困っているそうですが、対応の方法が分からず、賃借人は山田さんの顔を見るたび文句をいうため、山田さんは相当追い詰められているといいます。
相続してから15年。築古となった貸家のなかには空き家もあり、ずっと空き地のまま放置している土地もあります。
「私も年を取って、これから先どうしたらいいのか…」
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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