相続したマンションをすぐ売っただけなのに…
「まさか、売ったことが問題になるなんて思いませんでした……」
そう話すのは、父親の相続で都心のマンションを相続した絢香さん(40代・仮名)です。相続後しばらく悩んだ末、絢香さんはそのマンションを相続直後に売却しました。
自分では住む予定がなく、管理の負担も大きい。現金にしておいたほうが安心だと考えた、ごく一般的で、多くの人が「正解」だと思う判断だったといえます。
ところが、この「あとのことを考えていない売却」が、思いもよらない税務リスクにつながりました。
「タワーマンション節税」と指摘された理由
相続税の申告も、不動産の譲渡税の申告も同じ税理士に依頼。その税理士から「相続税の税務調査が入る」と連絡がきました。調査で指摘されたのが、「タワーマンション節税を目的とした相続ではないか」という点でした。
絢香さんが相続したマンションは40階建ての高層マンション。いわゆるタワマンでした。
不動産は、現金で保有するよりも相続税評価額が低くなりやすい一方、実際の売却価格(時価)が下がるわけではありません。
この理屈を利用して、相続税の節税対策として不動産を購入する人がいるので、近年、税務署が最も厳しく見ている内容です。
「節税するつもりはなかった」は通用しない
絢香さんはこう説明しました。
「父がセカンドハウスとして使う目的で購入したもので、節税目的ではありません。相続後も、自分では住まないので、深く考えずに売却しただけです」
もっともな説明に思えます。しかし、税務の世界では事情や気持ちよりも「事実」が重視されます。
税務署が問題視したのは、次の事実でした。
・相続で取得
・短期間で売却
・売却益が非常に大きい
この一連の流れから、「相続税評価と実態が著しく乖離している」と判断され、結果として「相続税を不当に圧縮したのではないか」と認定されたのです。
「追徴課税 約1,500万円」が課されることに
税務調査の結果、この相続は「タワーマンション節税」に該当すると判断されました。そのため、相続税申告時に用いていた不動産評価は否認され、評価の見直しを指摘されることに。結果として、過少申告加算税と延滞税が課され、追徴課税は約1,500万円にものぼる、非常に重い結果となったのです。
絢香さんはこう振り返ります。
「売らずに持ち続けていれば違ったのかもしれません。でも、税理士からも不動産会社からも、注意が必要だとは言われませんでした」
問題は「売ったこと」ではない
ここで重要なのは、売却そのものが悪いわけではないという点です。
問題なのは、
・なぜその不動産を持っていたのか
・相続後、どう扱うつもりだったのか
・全体の相続設計の中で、どう位置づけられていたのか
これらが整理されないまま相続を迎えてしまったことなのです。
「相続後に考える」は遅い
かつては、相続税評価が低い不動産を相続し、売却して現金化する流れが「うまくいく相続」と考えられていた時代もありました。しかし、今は違います。
税務署は、相続前後の経緯、売却までの期間、家族構成や資産全体をセットで見ています。
「相続が終わってから考える」「とりあえず売る」この判断が、最大のリスクになり得るのです。
