40代独身女性とその兄は、父が亡くなったのをきっかけに、母から新居への住み替えを提案され、了承。平穏な生活が続きますが、突然兄が結婚・家族と同居することになり、女性は居場所を失います。家を出るため、自宅の購入資金を返してほしいと考えますが…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。
父の死後「これからずっと親子3人で暮らそう」と母が…
今回の相談者は、40代の自営業の鈴木さんです。相続を経て落ち着いたはずの生活が、家族構成の変化によって波乱が生じ、非常に困っているとのことで、筆者のもとを訪れました。
鈴木さんはフリーのイラストレーターとして活躍されており、長いキャリアがあります。ずっと独身で働いており、60代の母親と、やはり独身の40代の兄と3人で同居していました。
「兄と私はこれまで浮いた話もなく、両親はとてもそれを気がかりに思っていて、とくに母親はことあるごとに干渉してきました。私も兄も、親に申し訳ないと思いつつ、仕事の合間に婚活していましたが、ピンとくる出会いがなくて…。結果、2人とも40代になるまで独身だったのです」
そのようななか、2年前、鈴木さんの父親が死去。すると、鈴木さんの母親は気持ちが変わったのか、〈このままずっと、親子3人で暮らしていこう〉といいだし、〈新しい家がほしい〉といって、不動産のチラシを集め始めました。
「古い実家を売却し、3人で暮らせる新しい家が買いたいというのです」
鈴木さんの実家は築40年とかなりの築古ですが、都市部の人気の高いエリアにあり、駅から徒歩5分の好立地です。そのため、買い手はすぐ見つかりました。
「同じ駅の少し奥まったところに、5,000万円の築浅の家が売り出されているのを見つけました。私も40代になり、これから自分が結婚することも、ましてや子どもを産むこともないだろうと思い、母の提案に乗ることにしました。
自宅買い替えの話はとんとん拍子に進み、60代の母親が2分の1、鈴木さんと兄がそれぞれ4分の1の割合で資金を出し合って共有名義の家を購入。そこで新しい生活がスタートしました。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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