「今度こそ!」相談者の再訪のワケ
「先生、これ……覚えていらっしゃいますか?」
葉子さん(70代女性・仮名)が静かに差し出されたのは、10年前、当方で作成した相続プランの提案書ファイルでした。
不動産の評価、将来の相続税試算、そして「どう対策すれば、相続税を抑えられるか」が具体的に書かれた提案書。
それを見た瞬間、私ははっきりと理解しました。やるべきことは、わかっていた。でも、実行できないまま、相続を迎えてしまった。相続の現場で、最も多く、そして最も悔やまれるケースです。
準備を始めた時期は決して遅くなかった
葉子さんが最初に夢相続を訪れたのは、ご主人がまだご健在だった頃でした。
・不動産の評価を正しく知りたい
・相続税がどれくらいかかるのか把握したい
・子どもたちに過度な負担を残したくない
そのご相談から、有料の相続プランの委託を受けて、
・不動産の詳細評価
・相続税の試算
・不動産を活かした節税・承継プラン
を整理し、具体的な相続設計の提案書をお渡ししました。
葉子さんは言われました。
「相続設計は完璧だった。この通りにできていれば、違う未来があったと思います」
想定外だった夫の体調悪化と認知症
その後、ご主人は体調を崩され、やがて認知症を発症。判断能力が低下し、契約、名義変更、不動産対策といった相続対策に不可欠な行為が、事実上できなくなってしまいました。
「もう少し落ち着いてから」
「まだ大丈夫だと思っていました」
しかし、相続対策には「できる時間」と「できない時間」があります。その境目は、ある日突然やってきます。そして、対策が実行できないまま、ご主人は亡くなられました。
相続発生後、頼ったのは会社の顧問税理士
相続後、葉子さんとお子さんたちが相談したのは、ご主人の会社の顧問税理士でした。
ご主人は会社を資産10億円以上の企業に成長させた創業者です。
・長年付き合いがある
・会社の事情をよく知っている
・税理士だから相続も安心だろう
そう考えるのは自然です。しかし、結果は非常に重いものでした。
相続税は3億円となり、配偶者の葉子さんが自宅、預金、会社の株など財産の半分を相続して、納税はなしとしましたが、子どもたちが支払った相続税は1億5,000万円以上。
会社を承継した長男は1億円以上の納税が必要で、「相続税の支払いのために苦労して会社経営をしてきたのか……」と本当にがっかりしていたといいます。
それだけでなく、さらに税務調査が入り、追徴課税まで発生。葉子さんは、こう振り返りました。
「申告はしてもらいましたが、顧問税理士には相続をどう設計するか、という視点はありませんでした」
失敗の本質は「申告」と「設計」の違い
ここが、最も重要なポイントです。顧問税理士が行ったのは、起きてしまった相続の後処理(申告)。一方、当方が提案していたのは、 相続が起きる前に、結果を変える設計です。
・不動産の評価を下げる
・財産の持ち方を変える
・収益を生む形に組み替える
この違いが、数千万円、時には億単位の差になります。
