5.企業業績と株式
<現状>
●ファクトセット(FactSet)によれば、日米の企業業績は過去最高水準を更新しており、好調を維持しています。6月末の米S&P500種指数の予想1株当たり純利益(EPS)は前年同月比+12.0%、TOPIXの予想EPSは同+18.6%と、いずれも2桁の伸びとなりました。
●米国株式市場は、FRBがFOMC参加者の政策金利見通しで利下げ予想を年内1回に引き下げたものの、米CPIの伸び鈍化などから長期金利が低下したことを好感し、半導体関連銘柄がけん引して上昇しました。NYダウは前月比+1.1%、S&P500種指数は同+3.5%の上昇となりました。
●日本株式市場は、狭いレンジでのもみ合いが続きましたが、米国株が最高値を更新するなか、月末にかけて買いが入り上昇しました。日経平均株価は前月比+2.8%、TOPIXは同+1.3%の上昇となりました。
<見通し>
●米国株式市場は、インフレの下げ渋りがみられるなかでも、米景気のソフトランディングを前提とした適温相場が続くとみています。FRBによる利下げが先送りされる可能性や、大統領選挙、地政学リスクの不透明感などから変動性が高まる局面が想定されるものの、米景気のソフトランディングに伴い企業業績の拡大が見込まれることから、米国株式市場は緩やかにレンジを切り上げる展開を予想しています。
●日本株式市場は、日本の名目GDP成長や製造業における景気循環の底打ちに伴う企業業績の拡大を背景に上昇すると予想します。日銀の政策変更に伴い長期金利は上昇傾向にあるものの、業績相場が続くことで下値は限られそうです。コーポレート・ガバナンス(企業統治)改革進展への期待に加え、自社株買いや新NISA(少額投資非課税制度)の資金流入など良好な株式需給も相場上昇を支えるとみています。
6.為替
<現状>
●円の対米ドルレートは、日銀が金融政策決定会合で国債買い入れの減額について、次回7月会合で具体的に決める方針を示し、先送りしたことから日米金利差が開いた状態が当面続くとの見方が強まり、じり安の動きとなりました。月末は37年半ぶりの円安水準となる160円台後半に下落しました。
●円の対ユーロレートは、金利水準が低い円の売りが優勢となり、172円台に下落しました。ユーロが単一通貨として成立してからの最安値を付けました。
●円の対豪ドルレートは、金利差を背景にした円売り・豪ドル買いが強まったことから、2007年以来の安値圏に下落しました。
<見通し>
●円の対米ドルレートは、当面はもみ合い推移が続くものの、米金利の低下に伴い、緩やかに上昇すると想定します。先行きはFRBの利下げ開始と日銀の利上げによる日米金利差縮小が円の上昇要因となるとみています。ただし、日銀は連続的な利上げを急がず、円の上昇余地は限られそうです。
●円の対ユーロレートは、当面レンジ内でもみ合うものの、先行きはECBによる追加利下げと日銀の利上げが意識され、緩やかに上昇するとみています。
●円の対豪ドルレートは、当面レンジ内でもみ合うものの、先行きは豪州中銀の利下げ開始と日銀の利上げが意識され、緩やかに上昇するとみています。