(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフリサーチストラテジスト・石井康之氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

【ポイント1】2024年の米投資適格社債市場のリターンは+2.1%

■2024年の米投資適格社債市場は、年前半、粘着質なインフレなどが警戒され、上値の重い展開となりました。しかし、米連邦準備制度理事会(FRB)による4年半ぶりとなる利下げを織り込み、7月から9月にかけては堅調な展開となりました。ただ、FRBの利下げ転換後は、トランプ氏が大統領選で勝利したことを受けて先行きのインフレ懸念が高まり、FRBの利下げ観測が後退したことなどから、年末にかけてやや軟調な展開となりました。

 

[図表1]米投資適格社債利回りの推移

 

■ブルームバーグの米投資適格社債指数(Us Aggregate Corporate Index)の利回りは2024年末に5.33%と、2023年末の5.06%から上昇しました。ベースとなる米国債利回りが上昇したことが要因です。

 

■米投資適格社債の利回りは、インフレ圧力の根強さなどを嫌気して、昨年4月に5.7%台まで上昇(債券価格は下落)しました。その後、9月にかけて同社債の利回りは4.6%台まで低下(債券価格は上昇)したものの、年末にかけて再び上昇しました。

 

■一方、企業の信用リスクを表す社債スプレッド(国債利回りに対する上乗せ金利)は、2023年末の0.99%から2024年末の0.80%に縮小しました。8月上旬に景気悪化懸念から急拡大したものの、米国経済の軟着陸(ソフトランディング)期待などから、その後は縮小基調となりました。

 

[図表2]社債スプレッドの推移

 

■2024年の同社債指数のリターン(米ドルベース)は+2.1%でした。米国債と比較すると、年限の近い中期ゾーンの米国債指数(5-7年)のリターン(+0.9%)を上回りました。

【ポイント2】2024年に米投資適格社債への資金流入が加速

■2024年は米投資適格社債市場への資金流入が加速しました。米調査会社EPFRによる投資信託を通した資金フローをみると、米投資適格社債ファンドには、2024年に474億ドル(約7.4兆円)の資金が流入し、2023年の153億ドル(約2.4兆円)を大きく上回りました。

 

■米投資適格社債市場への資金流入拡大の背景には、相対的に高い金利水準とFRBの利下げ転換により、投資家の買い意欲が一段と高まったことがあります。また、米景気が堅調に推移するなか、企業の信用リスクが高まらないことも社債投資の安心感につながっているとみられます。国債よりも高い利回りが期待できる社債に対する投資家の需要は根強く、投資マネーが同社債市場に継続的に流入しています。

 

[図表3]米投資適格社債ファンドへの資金フロー

【今後の展開】2025年の米投資適格社債市場は底堅く推移しよう

■弊社は、次期トランプ政権による規制緩和や減税、緩和的な金融環境に後押しされ、2025年の米国経済が個人消費を中心に好調さを維持するとみています。2025年の実質GDP成長率は前年比+2.3%を予想しています。また、FRBは、次期トランプ政権による政策の不確実性が高まるなか、雇用と物価を睨みながら、ゆっくりとしたペースで利下げを続けると予想しています。2025年に0.25%の利下げを2回行うと想定しています。

 

■弊社は、小幅ながらもFRBの利下げ局面が継続するため、2025年の米長期金利は緩やかに低下すると予想しています。また、米景気が好調さを維持すると見込んでいるため、企業の信用力は大きく悪化はせず、社債スプレッドは低水準で安定的に推移するとみています。米投資適格社債の利回りは、FRBが利下げに転換した後に5.3%台まで上昇してきており、相対的に高い利回り水準を求めて、同社債市場への資金流入は続くとみられます。このため、2025年の米投資適格社債市場は底堅く推移すると考えます。

 

(2025年1月10日)

 

石井 康之

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフリサーチストラテジスト

 

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