【ポイント1】ハイイールド債指数は最高値を更新
■ハイイールド債(ダブルB格以下の低格付け社債)市場が好調です。米インターコンチネンタル取引所(ICE)が算出するグローバル・ハイイールド債の代表的な指数は、今年の7月以降一段高となり、過去最高値を更新しています。同指数の年初来リターンは、足元で+7.9%となっています(10月21日時点)。
■ハイイールド債の好パフォーマンスの要因は、高いクーポン収入に加え、米連邦準備制度理事会(FRB)が4年半ぶりに利下げを実施し、金融引き締めからの転換に動いたことによる債券利回りの低下(債券価格の上昇)と、企業の信用リスクを表す社債スプレッド(国債利回りに対する上乗せ金利)の縮小(債券価格の上昇)です。
■足元のグローバル・ハイイールド債の利回りは7.1%台と、ベースとなる米国債利回りが低下したことを受けて、6月末の7.9%台から大幅に低下しました。また、社債スプレッドは3.0%台と、2007年7月以来の低い水準に縮小しています。
■社債スプレッドが歴史的に低い水準まで縮小している背景には、FRBによる利下げ開始に伴い米景気のソフトランディング(軟着陸)期待が高まっていることがあります。景気の底堅さを背景に企業業績は好調な状況が続いており、過去の景気減速局面と比べ、社債の発行体の信用力が安定しています。このため国債よりも高い利回りが期待できる社債に対する投資家の需要が強まり、ハイイールド債のスプレッドの縮小につながっているとみられます。
【ポイント2】投資マネーが流入するハイイールド債市場
■債券の利回りが依然として高水準にあるなか、景気が底堅く推移し、債務不履行(デフォルト)件数が低位に推移する状況下、投資マネーがハイイールド債市場に大きく流入しています。
■米調査会社EPFRによると、昨年11月以降、世界のハイイールド債ファンドへの資金流入が拡大しています。24年の資金流入額は足元(10月9日)までの累積で389億ドル(約5.8兆円)に達しました。市場でFRBの利下げ観測が強まった7月以降は資金流入の勢いが加速しています。
■ハイイールド債は、過去20年のリスク・リターン特性の観点でみると、リターン/リスク(リスクに見合うリターンが得られたかを示す指標)が0.63と、世界株式(0.56)や世界国債(0.27)と比較して優位にあります。この点も投資家がハイイールド債を選好する動きを強めている要因とみられます。
【今後の展開】米景気のソフトランディング期待が追い風
■ハイイールド債をめぐる好環境は今後も続きそうです。弊社は、FRBが雇用と物価を睨みながら、緩やかなペースで利下げを続けると予想しています。FRBは景気を熱しも冷ましもしない中立金利を3%程度に置いているとみられ、26年にかけて政策金利を3%近辺まで引き下げると想定しています。米利下げ局面入りに伴い米長期金利は緩やかに低下すると予想しています。
■また、弊社は、FRBの利下げ継続により米景気はソフトランディングすると見込んでいます。このため、企業の信用力は大きく悪化はせず、社債スプレッドは比較的低水準で推移するとみています。こうした環境下では、投資家のリスク選好姿勢が強まりやすく、ハイイールド債への資金流入が続くとみられます。
(2024年10月22日)
石井 康之
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフリサーチストラテジスト
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