(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフリサーチストラテジスト・石井康之氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。2024年6月のマーケットを振り返り、「1. 概観、2. 景気動向、3. 金融政策、4. 債券、5. 企業業績と株式、6. 為替、7. リート、8. まとめ」のそれぞれについて解説します。

7.リート

<現状>

●グローバルリート市場(米ドルベース)は、米長期金利低下が好感された一方、欧州政治の不透明感が高まったことが警戒され、ほぼ横ばいでした。S&Pグローバルリート指数のリターンは前月末比+0.6%でした。また、円ベースのリターンは、為替効果がプラスに寄与し、同+3.0%となりました。

 

●米国は、長期金利が低下したことを受けて投資家のリスク選好姿勢が高まったことから上昇しました。欧州リートはフランスを中心にユーロ圏における政治の不透明感が嫌気され、下落しました。日本は、日銀の金融政策正常化に対する警戒感や需給悪化懸念から続落しました。

 

<見通し>

●グローバルリート市場は、米欧の中央銀行の利下げに伴い長期金利の低下が見込まれ、借り入れコストが改善することや、米景気のソフトランディングにより世界景気が底堅く推移し、賃料収入の安定推移が期待できることから、回復基調を辿ると予想します。

 

●米国は先行きのFRBによる利下げ開始や景気のソフトランディングを背景に緩やかな上昇を想定します。欧州はECBの利下げ局面入りに伴う上昇を予想します。アジア・オセアニアは景気の回復基調を背景に上昇を予想します。日本はオフィス賃料の改善を背景に持ち直すと予想します。

 

グローバルリートの推移

8.まとめ

【債券】

●米国の長期金利は、当面もみ合いを続けた後、緩やかに低下すると想定しています。堅調な雇用情勢やインフレの高止まりを受けて、利下げ開始時期の先送りが警戒されるものの、年後半にFRBによる利下げが実施されると見込んでおり、徐々にレンジを切り下げていく展開を予想します。

 

●欧州の長期金利は、ECBが今後四半期に一度のペースで追加利下げを行うと想定していることから、緩やかに低下する展開を予想します。

 

●日本の長期金利は、円安圧力が続いていることから、日銀の追加利上げや国債買い入れ減額が警戒され、やや上昇すると予想します。

 

【株式】

●米国株式市場は、インフレの下げ渋りがみられるなかでも、米景気のソフトランディングを前提とした適温相場が続くとみています。FRBによる利下げが先送りされる可能性や、大統領選挙、地政学リスクの不透明感などから変動性が高まる局面が想定されるものの、米景気のソフトランディングに伴い企業業績の拡大が見込まれることから、米国株式市場は緩やかにレンジを切り上げる展開を予想しています。

 

●日本株式市場は、日本の名目GDP成長や製造業における景気循環の底打ちに伴う企業業績の拡大を背景に上昇すると予想します。日銀の政策変更に伴い長期金利は上昇傾向にあるものの、業績相場が続くことで下値は限られそうです。コーポレート・ガバナンス改革進展への期待に加え、自社株買いや新NISAの資金流入など良好な株式需給も相場上昇を支えるとみています。

 

【為替】

●円の対米ドルレートは、当面はもみ合い推移が続くものの、米金利の低下に伴い、緩やかに上昇すると想定します。先行きはFRBの利下げ開始と日銀の利上げによる日米金利差縮小が円の上昇要因となるとみています。ただし、日銀は連続的な利上げを急がず、円の上昇余地は限られそうです。

 

●円の対ユーロレートは、当面レンジ内でもみ合うものの、先行きはECBによる追加利下げと日銀の利上げが意識され、緩やかに上昇するとみています。

 

●円の対豪ドルレートは、当面レンジ内でもみ合うものの、先行きは豪州中銀の利下げと日銀の利上げが意識され、緩やかに上昇するとみています。

 

【リート】

●グローバルリート市場は、米欧の中央銀行の利下げに伴い長期金利の低下が見込まれ、借り入れコストが改善することや、米景気のソフトランディングにより世界景気が底堅く推移し、賃料収入の安定推移が期待できることから、回復基調を辿ると予想します。

 

●米国は先行きのFRBによる利下げ開始や景気のソフトランディングを背景に緩やかな上昇を想定します。欧州はECBの利下げ局面入りに伴う上昇を予想します。アジア・オセアニアは景気の回復基調を背景に上昇を予想します。日本はオフィス賃料の改善を背景に持ち直すと予想します。

 

 

(2024年7月2日)

 

石井 康之

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフリサーチストラテジスト

 

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『「1ドル=160円超え」で円安進行も、ドル円は緩やかに上昇すると想定 ~マーケットの振り返りと見通し【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジスト】』を参照)。

 

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
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