えっ、4,000万円の価値があるはずじゃ!? …亡き親族の不動産、相続して呆然。不運の連鎖で「700万円」にまで評価がしぼんだ、ツラすぎる経緯

えっ、4,000万円の価値があるはずじゃ!? …亡き親族の不動産、相続して呆然。不運の連鎖で「700万円」にまで評価がしぼんだ、ツラすぎる経緯
(※写真はイメージです/PIXTA)

ある男性は、独身の叔父から財産をすべて引き継ぐことに。計算上は総額で7,500万円になるはずでしたが、叔父が存命のころから生じていた問題が影響して、大きく価値を毀損することになります。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、事例をもとに解説します。

「ウッソ、4,000万円の借地権が702万円に!?」

佐藤さんと地主は叔父の未納の一件でギクシャクしており、地代は法務局へ供託している状況です。借地権の購入希望者がいれば、交渉の余地があるのかもしれませんが、買い手が見つからない以上、どうしようもありません。

 

佐藤さん夫婦や税理士を交えて打ち合わせをした結果、地主の言い値で買い取ってもらったほうが負担が少ないとの結論に至り、先方に提案することになりました。

 

それに対する地主側からの回答と条件は、以下のようなものでした。

 

・買取金額は供託金の702万円

・建物はそのままでよい

・建物内の荷物と庭の物置などはすべて撤去すること

 

相続税申告の準備のため、すでに税理士が資産の評価を進めていましたが、そこで4,000万円と評価されていた借地権が、702万円の価値になります。

 

「うそ、たったそれだけですか…」

 

佐藤さんはそういうと、ガックリと肩を落としました。

 

筆者は、少々理不尽ではないかと思い、家庭裁判所に借地非訟の申立て(裁判所「第1 借地非訟とは」参照)をして適切な 価格を出してもらうことができないかと、提携先の弁護士に相談してみました。

地主への借地権の売却、弁護士の見解は厳しく…

ところが、それに対する弁護士からの回答は、なかなか厳しいものでした。

 

①地主に買い取るよう請求する権利はない。

 

②そのため、借地権の買受人が現れない場合、借地権を手放して地代の負担から解放されるには、地主側が提示した条件に応じざるを得ないだろう。

 

③買受人がいなければ、借地権の相続評価価格も「絵に描いた餅」に過ぎず、4,000万円という価格を前提に地主と交渉をすることは困難である。

 

④しかし、借地権の買受人が見つかり、また、地主がその譲渡を認めない場合、第三者への譲渡について、地主の承諾に代わる許可を求めて裁判所に申立て、裁判所に適正な価格を判断してもらうことができる。

 

裁判所が地主の承諾に代わる許可を与える場合は、名義書換手数料として、地主に対して借地権価格の10%程度を支払うよう要求されることが多いです。

 

また、上記の申立てに対して、地主が「優先譲渡」(地主へ優先的に賃借権を譲渡するよう請求してきた場合・介入権の行使)の申立てをしてきた場合は、地主が借地人に対して支払う相当対価を判断することになります。

 

その場合、建物譲渡代金と土地借地権の譲渡代金から名義書換手数料を差し引いた価格(借地権価格の約10%)が相当価格とされることが多いです。

 

もっとも、借地権の価格が賃貸借契約当初と比較して上昇している場合は、公平の観点から、地主に分配される部分を清算し、借地権価格が決められることになります(したがって、第三者に譲渡される価格よりも低くされることが多くなります)。

 

以上のとおり、借地権の買受人が見つけられない場合は、地主に対して優位に立てないため、地主側の要求に応じざるを得ないと思われます。

時価申告で「相続税ゼロ円」にできたのが、せめてもの救い

佐藤さんの叔父の借地は、不利な要因が重なったことで、当初の見込みである4,000万円ではなく、702万円の時価ということで、時価申告することにしました。結果、相続財産は基礎控除の範囲内となり、相続税は「0円」という結果になりました。節税が実現できたのがせめてもの救いです。

 

今回、地代を一時期滞納したことを理由に「借地権が消滅した」と主張されたこと、また、旗竿地という地形から買い手が見つからないといった不運が重なったことで、不本意な結果となってしまいました。

 

「借地」の場合、自身の判断だけでは売却その他を進められないため、できれば買い取るなどして解消しておくことが大切です。早い段階での決断が、結果の明暗を分けるといえます。

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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