夫が亡くなり、初めて自宅の「登記簿」を見たら…
今回の相談者は、50代の会社員の山田さんです。夫が亡くなり、相続手続きのために資産の確認をしたところ、非常に困ったことが判明したため相談に乗ってほしいと、筆者のところに訪れました。
夫の財産は自宅と預金です。3人の子どもたちは、母親の老後生活のためにすべて母親が相続することで合意し、手続きはスムーズにできています。
「自宅を相続するため、手続きを進めようとしたら…。夫と夫の両親の共有名義になっているのです」
山田さんの夫の両親は、ともに80代と高齢ですが健在です。
「子どもたちは全員独立し、都心部で働いており、こちらに戻る予定はありません。私は広すぎる家を処分して、駅そばの単身用のマンションに引っ越したいと考えていたのですが…」
新築の建売住宅、購入資金を半分援助してくれた義両親
山田さんの夫は二男で、実家を離れています。3人目の子どもが生まれたとき、家を購入することになりましたが、そのとき、夫の両親が半分ほどは援助すると言ってくれたそうです。
「敷地25坪、木造2階建て4LDKの新築の建売住宅でした。場所もよく、建物も気に入り、家族で快適に暮らしてきました」
山田さんの夫は非常に几帳面なタイプで、あらゆる事務的な手続きを率先してやってくれていました。そのため、税金周りなどは、夫が亡くなって初めてタッチしたといいます。
「お恥ずかしい話、自宅の登記簿を見たのも初めてでした。本当に驚いてしまって…」
夫も山田さんに「両親が半分援助してくれた」と言っていたため、購入資金を贈与してもらっただけで、不動産はすべて夫名義だと思っていたのです。ところが、登記簿を見ると土地、建物ともに7/15が夫の父親、3/15のが夫の母親、夫は残る5/15のという割合で登記されていたのでした。
「とりあえずは夫の分の〈5/15〉は私の名義として相続登記をすませたのですが、残る10/15については義両親のままなのです。いったいどうしたら…」
山田さんは夫の配偶者ですが、義両親の相続人ではありません。夫の代襲相続人となるのは山田さんの子ども3人ですが、3人とも生活拠点はすでに別の場所にあることから、名義は山田さんにするのが妥当です。
「遺贈」で生じる不都合とは?
筆者は、山田さんのほか提携先の司法書士を交えて話し合い、そこで、義両親に遺言書を作成してもらい、それぞれから山田さんに遺贈してもらうという案が浮上しました。
「義父も義母も、あの家に名義はありますが〈二男に買った〉という認識だと思います。ですから、私に遺贈する内容で遺言書を書くことも、抵抗はないと思います…」
しかし、夫の両親はお元気とはいえ80代です。いつ相続発生となるかわかりません。もし準備が整わないまま相続が発生すれば、夫のきょうだいにも相続権が発生することになり、困った事態となってしまいます。
それに、相続が発生するまで資産を動かせないことにも不安があります。