(※写真はイメージです/PIXTA)

老後、いったいどのくらいお金を持っていれば安心なのか……平均寿命が伸び続けるなか、昨今の物価上昇もあり、老後生活に不安を抱く人は多いでしょう。しかし、過度な不安は、かえって事態を悪化させることもあるため、注意が必要です。老後、家族に迷惑をかけないために知っておきたいお金のことを、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが事例を交えて解説します。

老後破産は避けたい!Aさんは「マンション購入」を決意

「なにか対策を取らなければまずい」と考えたAさんは、早速動きます。番組で、老後破産対策として「ワンルームマンションを現金で購入し、賃貸することで得た家賃を老人ホームの入居費用にする」という方法を紹介していたことから、パソコンで自宅近辺のワンルームマンションを検索。

 

すると、自宅から電車で20分ほど行ったところに、2,500万円で売りに出ている中古物件を見つけました。

 

その物件を仲介している不動産業者に連絡したところ、月約6万円で賃貸できることがわかったAさんは、「今度の週末、息子といっしょに物件を見に行きます」と約束を取りつけました。

 

その夜、電話で息子のBさんに一連を説明を行い、「マンションを買うから、いっしょに内見に行ってくれない?」と話したところ、Bさんは仰天。慌ててAさんのところに飛んできました。

 

母さん、よく考えて…息子が説得を試みるも、不安な気持ちから取り乱すAさん

BさんはAさんに、「どうしたの急に。なんでいきなりマンション買うなんて言うの? まさかセールスとかじゃないよね」と尋ねます。

 

Aさんは、いつもは優しい息子の一変した表情にうろたえ口ごもってしまいましたが、「母さん、本当のことを話して」と諭され、素直にその経緯を話しました。「テレビで特集を見て、マンションを買えば老後のお金の足しになると思ったの」。

 

するとBさんは、「なんだ……(笑)ああ、よかった。騙されたのかと思った。そんな理由だったの、母さん」とひと安心の様子です。続けてBさんは、次のように言いました。

 

「でもね、よく考えてよ。いま2,700万円あるでしょ。預金から2,500万円支払えば、残りは200万円だよ。たとえ6万円で部屋を借りる人がいても、マンションの共益費や修繕積立金はオーナーの母さんが負担するから、まるまる収入にはならない。それこそ老後破産すると思うよ」。

 

しかし、Aさんは意外な反応を見せました。「でもね、お金はなくなっていくんだよ! もう父さんはいないし、あんたに頼るわけにもいかないし、あたし1人でどうにかするしかないの。どうすればいいのよ……」Aさんは取り乱してしまいました。

 

1人で説得するのは難しいと考えたBさんは、老後の資金計画について一緒に考えてもらおうと、亡き父が懇意にしていたファイナンシャルプランナーである筆者のもとに、母とともに相談に訪れました。

 

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※プライバシー保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。

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