老後破産の可能性は“限りなく低い”が…FPが行った「助言」
母子から一連の話を聞いた筆者は、まずAさんが購入しようとしたマンション周辺の分譲マンションの購入価格と家賃相場を調べることにしました。
相場と比較すると、購入価格は交渉しだいで2,500万円よりもう少し安く手に入れることができそうです。
ただし家賃については、同じような間取りのマンションで5万円台の物件がいくつかあり、なかには新築マンションもあることから、中古で6万円の物件は入居者が集まりづらい可能性があると伝えました。
次に、Aさんは3年間で貯蓄が300万円減ったことを心配していましたので、支出の内訳を一緒に確認します。
すると、生活費以外の大きな出費は防犯カメラやドアの補助鍵、窓ガラスに貼る防犯フィルムなど、Aさんがひとりで住むために設置したものの費用や、亡き夫の1周忌・3周忌の法要費用といったもので、毎年出ていくお金ではありませんし、使途も明確です。
「あまり心配することはありませんよ」とお話ししましたが、Aさんは「でも、私はこれから認知症になるかもしれませんし、介護が必要になったときにまとまったお金が必要でしょう?」とおっしゃいます。
そこで筆者はより詳しくAさんの収支を確認し、試算のうえで次のように言いました。
筆者「現在、Aさんはほとんどの月を年金月額13万円の範囲内で生活できています。もし仮に100歳までの25年間毎月5万円ずつ貯蓄を取り崩し、さらに介護が必要になったとしても、1,500万円+580万円※=2,080万円で口座には620万円残ります。ですから、無理にマンションを買わずとも、Aさんは安心して生活できますよ」。
※ 『生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」2021(令和3)年度』によると、月々の介護費用は平均8.3万円、介護期間は平均5年1ヵ月。それに住宅改造や介護用ベッドの購入費など一時的な費用平均74万円を加えると約580万円となる。
また、任意後見制度※1や、家族信託※2の制度の利用も、母子で検討するよう提案しました。
※1 任意後見制度……認知症や障害になったときに備え、本人の判断能力があるうちに、「任意後見人」を選び契約を結ぶことで、判断能力がなくなった場合に財産の保護や管理を受けられる制度。今回の場合、AさんがBさんを任意後見人に選定すれば、Aさんが認知症になった場合などにBさんがAさんの財産を管理できる。
※2 家族信託……あらかじめ不動産や金融などの財産を家族に託し、管理や処分を任せる財産管理の方法。
Bさんは親子間のコミュニケーションの重要性を再認識
Bさんと筆者の助言を受けたAさんは、マンションの購入を断念。後日、息子のBさんは、「悪徳商法や特殊詐欺には絶対に合わないように注意していたのですが、まさかの理由で破産するかもしれないところでした。母親とはこまめに連絡をとっていて本当によかったです」と笑いながら話してくれました。
メディアの報道から情報を得て行動に移すのは立派なことですが、その内容はあくまで一例です。自身の家計収支や貯蓄に置き換えるとどうなるのか、特に不動産購入といった大きなお金が動く対策をとる場合には、1人で決めることはせず、まずは信頼できる家族や専門家に相談するなどして、念入りに検討することをおすすめします。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員
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