円安阻止介入の実施で円安は止まる?
2024年に入ってからの関係で見ると、米金利の上昇を受けた日米の金利差の拡大は、153円程度の米ドル高・円安を正当化しているように見えます。ただ、2023年までの関係で見ると、足元の日米の金利差拡大は、150円以上の米ドル高・円安を裏付けるものではありません(図表4参照)。
金利差以上の米ドル高・円安となっているのであれば、それをもたらしている大きな要因として、投機筋による「米ドル買い・円売り」の拡大がありそうです。CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円売り越しは、先週までに16万枚以上に拡大し、2007年以来の規模になりました。
2007年のケースでは、日米政策金利差の「米ドル優位・円劣位」が5%以上に拡大するなかで、圧倒的に有利な米ドル買い・円売りが急増したと考えられますが、最近も同じような構図での投機的な米ドル買い・円売り拡大が起こったということではないでしょうか(図表5参照)。投機筋の米ドル買い・円売りは、金利差の「米ドル優位・円劣位」が縮まっていくまでは根強く継続する可能性があります。
ただし、足元でいえば、すでに大きく「米ドル買い・円売り」に傾斜している状況のなかで、円安阻止のための米ドル売り・円買い介入が実現した場合、さらなる米ドル買い・円売りが拡大する余地は限られるのではないでしょうか。投機筋が米ドル買い・円売りポジションの手仕舞いに転じるようなら、一定程度、「米ドル安・円高」に戻る可能性もあり得ます。
今週の注目点=円安阻止介入との攻防、米景気指標発表
今週は、月曜日の小売売上高、通称「エンパイア指数」のNY連銀製造業景気指数など米景気指標の発表が多く予定されています。「米金利上昇=米ドル高」傾向が続いている背景には「米景気の強さ」があります。このため、それに変化の兆しはないかを見極めていくことになりそうです。
ちなみに、定評の高い経済予測モデルであるアトランタ連銀のGDPナウが10日更新した1~3月期の米実質GDP伸び率予想は2.4%(前期比年率)となっており、依然として米景気回復が続いているとの見方のようです。米景気が急減速に向かう兆しが出てこない限り、基本的にはFRB(米連邦準備制度理事会)利下げや、それを受けた米金利の大幅な低下といった見通しが広がる可能性は低いでしょう。
以上から見ると、今週は長く続いた小動きを上放れしたことを受け、さらなる米ドル高・円安を模索するなかで、日本の通貨当局による円安阻止介入との攻防があるかが最大の焦点になりそうです。仮に介入があった場合は、2022年の介入局面を参考にすると、米ドル/円は5円程度と大きく反落する可能性もあるでしょう。それを踏まえ、今週の米ドル/円は148~155円と予想します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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