「1ドル=155円」まで円安阻止介入はなし?
米ドル/円が153円まで上昇してきた動きは、過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)を25%程度上回った計算になります。このように、米ドル/円が5年MAを2割以上上回ったのは、1990年以降ではこれまで4回ありました。逆に、5年MAを2割以上下回ったのは2回でした。そして、その6回のうち4回で為替介入が実施されました(図表2参照)。
一方で、為替介入が実施されなかったのは2015年と2023年でした。前者は「アベノミクス円安」と呼ばれた局面で、日本政府が事実上「円安容認政策」をとっていたと見られた時期だったので、介入がなかったのも当然でしょう。
後者は、前者との共通点に「株高」局面での円安だったということがあります。その意味では、株高の局面においては、通貨当局も円安に対して寛容になりやすいと考えられなくもありません。ただし、2023年は米ドル高・円安のピークのタイミングであり、通貨政策の実質的な責任者である神田財務官が「(介入は)スタンバイです」と発言したことから、介入を試みたものの、やる前に円高に反転したことから、結果的に介入しなかっただけとの見方もあります。
以上を踏まえると、最近のように、5年MAから2割以上かい離した局面では、基本的にはアベノミクスのような特例を除くと、為替介入が行われる可能性が高かったといえそうです。であれば、なぜ先週は介入が実施されなかったのか?
元々、今回の円安阻止介入について、151.9円の米ドル高値を更新後すぐに介入を実施してしまうと、通貨当局が繰り返してきた「特定の水準を念頭に置いていない」との発言と辻褄が合わなくなりかねないため、155円に近付くまでは動かない可能性もあるという見方はありました。
とくに先週の場合は、予想より強い米CPIの結果を受けた米金利上昇となったため、それに沿う流れでの「米ドル高・円安」だったとも言えます(図表3参照)。
にもかかわらず、介入に出動すると、やはり米ドルの高値更新が米ドル高・円安阻止の「目標水準」だったと受け止められかねなかったでしょう。その事態を防ぐため、すぐに介入に動かなかったにすぎず、さらに155円に向かうような円安となった場合、介入を実施するとの判断に変わりはないと推測されます。
それでは、介入が実施されたら円安は止まるのでしょうか?
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