金利上昇により、乖離し続けた利潤率と利子率が「収斂」する
より本質的に考えると、いま「乖離し続けた利潤率と利子率の収斂」が急進展していることが重要である。当社は過去10年以上にわたって利潤率と利子率が乖離し続ける異常性を指摘し続けてきた。
日本も米国も2000年前後から金利が下がる一方で利潤率が上がるという、ワニの口を開けたような両極化が進行した。2007年に上梓した「新帝国主義論」(東洋経済)でこの奇妙な現象を指摘した(p108)が、当時その理由はよくわからなかった。その直後のリーマンショックで利潤率が低下してワニの口はいったん閉じたが、その後両者の乖離はさらに大きく拡大した。
利潤率の指標としては、総資本利益率、ROE(自己資本利益率)、株式益回り(利益/株価)などがあるがワニの口の拡大はどの利潤率指標を見ても明白である。
[図表12]は利潤率の代表としての株式益回りと利子率(10年国債利回り)の推移を見たものであるが、2000年頃まで強く連動していた両者が以降大きく乖離したことがわかる。
しかしこの乖離は今回の金利上昇で大きく収斂した。
FRBはかつて株価のフェアバリューとして《予想1株利益/10年国債利回り》というモデルを提起したことがあった。それは株式益回り《予想1株利益/株価》が10年国債利回りと等しくなる水準が適正株価であるとするものである。
このモデルに基づけば、過去20年間金利が低下した過程で株価の上昇が不十分なために株式益回りは低下せず、株価のアンダーバリュー状態が続いていたことになる。
このフェアバリューとの比較で著しく割安だった株価が、金利の上昇によってフェアバリューに大きく近づいたということになる。
「資本主義の危機」が回避され、経済が回り出した
さて、この利潤率と利子率の乖離は破局に至る危険な前兆である。資本主義では、儲かる仕事があるから資金の争奪戦が起こり、お金が有効に活用されることで金利が上がっていく。
しかし企業が儲かってもその資金が遊んでいて使われず、金利が下がっていくとすれば、それは資本主義が機能していないことを意味する。遊んでいる企業の儲けを経済の再循環過程に還流させないと大変なことになる、大恐慌に至るような危険なシグナルだと主張してきた。その概念図を[図表13]に示したので、一瞥されたい。
資本を経済の循環過程に還流させる方法はいくつかあるが、いまの米国ではそれがうまく機能し始めたことによって金利が上昇し、遊んでいる資金が有効に活用され始めた、そう解釈すれば、いま起こっていることを整合的に説明できる。
では、遊んでいた資金がどのように動き始めたのか。そのひとつは財政政策である。政府が遊んでいるお金を有効に活用し始めた。イエレン財務長官が主導する高圧経済政策(MSSE)が見事に寄与していると思われる。
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