国民の生活はほとんど改善されていないが…10年間で株式時価総額が3.3倍増加している「日本経済」の謎【経済の専門家が解説】

国民の生活はほとんど改善されていないが…10年間で株式時価総額が3.3倍増加している「日本経済」の謎【経済の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

日本はこの10年で、企業利益は2倍以上、株式時価総額は3倍以上にも増加しました。一方、個人の生活はほとんど改善されていないように感じます。それはいったいなぜなのか、株価と日本人の生活の乖離について、株式会社武者リサーチの武者陵司氏が詳しく解説します。

好調な株価と個人生活の乖離

7月31日の日銀利上げによって引き起こされた、3日間で7,600円、20%の空前の株価暴落(日経平均)は、その後7日間で6,500円、20%と急騰し、下落幅の85%が取り戻された。このV字回復は、株価下落がファンダメンタルズに基づいたものではなかったことを示唆している。

 

だが人々が悲観に流されたのも無理からぬこと、と言えなくもない。これまで日本人の生活実態はほとんど改善されてこなかったからである。

 

[図表1]によって実質個人消費支出を振り返ると、過去10年間では、2014年3月の消費税増税(5→8%)直前の2014年1~3月の310兆円がピークで、その後一度もそれを上回っていない。
 

出所:武者リサーチ
[図表1]乖離する日本の名目総所得(GNI)・名目GDPと実質GDP・実質消費 出所:武者リサーチ

 

コロナパンデミック時2020年4~6期の272兆円から回復に転じ、直近の2024年4~6月は前期比年率4.0%と上昇したものの、依然として10年前のピークに比べ4%減の水準にある。この間、企業利益は2.2倍、株式時価総額は3.3倍、一般会計税収は1.6倍になったのであるから、いかに個人生活が取り残されてきたかがわかる。

 

では株価や企業利益がまったくの砂上の楼閣なのかと言うと、そうではない。

 

8月15日に発表された4~6月期GDP統計によると、日本人が稼ぐ所得総額(名目GNI)は647兆円、前年同期の630兆円比2.7%増、前々年同期の593兆円比9.1%増と鋭角的拡大か続いている。

 

実質GDPがここ2年間550兆円でまったく成長していないなかで、なぜ名目GNIが急成長できたのか。

 

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次ページ株価や企業利益が好調な理由

※本記事は、武者リサーチが2024年8月19日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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