インフレは沈静化も…FRBが利下げ期待を「牽制」するワケ
米国経済の深刻な減速や株価の急落は考えられない情勢である。いまの米国の政策金利5.25~5.50%から利下げがスタートするので2~3%もの利下げが可能、それはアニマルスピリットを鼓舞し株価を大きく押し上げるだろう。
しかしリセッションの危険がなければ利下げを強行し、過度に株価を押し上げる必要はない。これまでは決まって急速な利上げのあと、急速な利下げが実施されてきたことから、市場は今回もそれが繰り返されると見て性急に金利低下を織り込もうとしている。
しかしFRBは繰り返しHigher for Longerと述べて、市場で高まる利下げ期待に牽制をかけている。
そもそも利上げの発端であるインフレは大きく鎮静化した。当社の主張どおり、2021年後半からのインフレが一過性であったことはいまや明白である。
エネルギー価格、サプライチェーンの混乱、食品価格は完全に沈静化した。サービス価格と家賃はまだ上昇が続いているが、サービス価格の決定要因である平均時給はピーク時前年比7%上昇から年率で2~3%まで低下している。また、帰属家賃は住宅価格をもとに遅れて計算されるもので、これから下がってくることが見えている。
このように2%台のインフレが見えているのに政策金利は5.5%、実質金利は2~3%と過去15年間で最高の水準が維持されるのはなぜか。FRBはなぜHigher for Longerのスタンスを維持しているのだろうか。
それは持続的な経済成長を維持するのにふさわしい、いわゆる中立金利の水準が上がってきたからと考えるしかないのではないか。しかし正しい中立金利の水準は誰にもわからないので、これまでFRBは瀬踏みをしながら利上げを続けてきた。
パウエルFRB議長がジャクソンホール会議で言った名言「我々は曇天の下で星を頼りに航海をしている」はそれを示している。
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