(※写真はイメージです/PIXTA)

老人ホームの入居費用は「非課税財産」とされています。しかし、非課税財産について正しい知識がなければ、あとになって税務調査の対象となることも……。本記事では、妻の老人ホームの一時入居金を夫が支払った事例とともに、老人ホーム費用と税金の関係について、大倉佳子税理士が解説します。

老人ホーム費用に贈与税はかかるのか?

そもそも「夫が妻の介護費用を払う」「別居している子供が介護費用を払う」といったときには贈与税はかかりません。

 

これは、相続税法第21条の3において『扶養義務者相互間において生活費や教育費に充てるために贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの』には贈与税を課さない、と書かれているからです。

 

すなわち、『本来贈与だけれども、非課税財産だから、贈与税は課税されない』といっているのです。

 

では、妻が入居する老人ホームの入居一時金を亡夫が支払っているときに相続税法第21条の3に該当するのかということです。ここで「通常必要と認められている」という記載に疑問がわきます。

 

・どのくらいの金額であるのか? 

・過度に高額でない金額とはいくらなのか? 

 

上記については、「社会通念で判断する」という規定があげられているだけで明示はされていません。このため、税務調査の場面で争いが生じているのです。

海が見える高級老人ホーム費用を夫が支払ったケース

今回の事例として妻が入居した老人ホームについてです。

 

・夫は87歳、妻は85歳で結婚生活60年の老夫婦

・妻は、近年足が少々不自由になってきており、一軒家の自宅での生活に少し不便を感じているが、要介護認定は受けていない

・老人ホームの入居に係る契約は、当該老人ホームと妻とのあいだで締結され、妻のみが老人ホームに入居した(※契約よって発生する金員は、契約者が支払うことが通常である)

・妻の要望により「海が見えるところ」との希望を叶えるため、海辺の景色がきれいな、いわゆる「高級老人ホーム」を選んだ

・妻は、無職無収入、実家からの援助や相続財産等資産はない

・海の見える老人ホームの費用(入居一時金4,000万円、毎月家賃30万円)は、夫が支払う

・妻の入居から2年半後、夫が逝去

 

家賃30万円は、食事代や光熱費に充てられるとすれば、生活費としてみることができると考えます。

 

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