「入居金4,000万円」がみなし贈与で贈与税課税へ
入居金4,000万円の扱い
今回のケースでは、妻は、入居一時金全額の支払いによって取得する施設利用権を、低廉な支出(妻の支出はゼロ)によって取得したものと認められた場合、妻が著しく低い対価で老人ホームの施設利用権に相当する経済的利益を享受したとみなされてしまいます。
この場合、入居金4,000万円はみなし贈与となり、贈与税が課税されることになります。
贈与税はいくらになるのか?
贈与税は、基礎控除後の課税価格が3,000万円超となった場合、最高税率の55%が適用されます。申告していない場合、「無申告加算税も払ってください」と言われます。
「課税か否か」は、要介護の状況や施設の充実度によって変わる
課税される財産か否かについては、2種類の異なった裁決がありますが、要介護の状況や施設の充実度などの判断材料が大きく異なっています。
■国税不服審判所の裁決
・裁決事例1:平成22年11月19日裁決
入居金945万円
自宅での介護が困難
地味な施設(認定上)
⇒入院と同視できるとして贈与税は非課税
・裁決事例2:平成23年6月10日裁決
入居金1億3,370万円
施設には、ジムやプールといった設備あり
⇒社会通念上生活に必要な住居の費用ではないとして贈与税は課税
老人ホームといっても設備の内容、介護付きか否か、居室の広さ、娯楽施設の有無などそれぞれ異なることでしょう。要介護のためにこの老人ホーム入居が必要等税務署にいかに「通常必要と認められるもの」であるという判断材料の提供ができるかです。
相続税が課される可能性も
贈与税だけではなく、相続税への影響も考えられます。
夫の死後、まさかの税務調査に
遭遇したくないものですが、夫死亡後に妻の元に「〇〇税務署です。相続税で確認したいことがあります」といった通知が来た場合、税務署は「調査」とストレートには言わず「確認」という言葉を使います。
今回の事例では、妻の老人ホームの入居一時金(この場合、通常必要と認められるもの)を負担して3年以内に夫が亡くなったため、相続税の生前贈与加算の対象となり、相続税が課されることに(令和5年度税制改正により加算期間が、順次7年以内に延長)。
相続税はいくらになるのか?
妻しか相続人がいなかったため、下記のように計算されます。
入居金 4,000万円-(3,000万円+600万円)=400万円
400万円×10%=40万円……相続税(本税)
A:40万円+無申告加算税15%(40万円×15%)+延滞税(申告期限から納付日まで)
このAが納付金額となります。無申告加算税は、本税が50万円を超えると50万円を超えた金額は20%となります。
しかしながら、調査できる期間(時効)がありますので、税務署は贈与税を狙っているかもしれません。相続税のほうが、納付税額は低いでしょう。
対策としては、当初の入居金4,000万円支払うときに夫婦間でも「金銭消費貸借契約」を結んでおき、税務署にその旨、伝えておくと、贈与ではなく相続で申告すれば問題ないと考えます。
一人で解決しようとせずに税理士などの専門家へ相談しましょう。
大倉 佳子
大倉佳子税理士事務所
代表
税理士
\「税務調査」関連セミナー 6/5(木)LIVE配信/
指摘率トップ! 名義預金 を税務署はどうみているか?
相続税の税務調査の実態と対処方法
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一級建築士、土地家屋調査士、
不動産鑑定士、相続専門税理士
4つの視点による「相続税土地評価」
と相続対策の進め方