だからといって、それだけで遺言書自体が無効になることはありません。しかし、遺留分を侵害された相続人には、遺留分を侵害している者に対して不足分を請求する「遺留分侵害請求権」という権利があります。
遺留分侵害請求がされなければ遺言書の内容がそのまま実現されることになりますが、遺留分侵害請求権は守られるべき相続人の権利であるため、遺言書よりも強い効力を持つことがあります。請求されれば、遺言書の内容が覆される可能性があることを知っておかなければなりません。
遺留分侵害請求権は相続が開始されたことを知ってから1年、もしくは相続の開始から10年が経過すると消滅します。また、兄弟姉妹にはそもそも遺留分が認められていません。
「遺留分侵害請求権」は2019年7月1日に民法改正されたものです。相続開始日が2019年7月1日以降の場合は適用されますが、2019年7月1日より前の場合は民法改正前の「遺留分減殺請求」が適用されるので注意しましょう。
遺言書の効力が無効となるケース・無効とならないケースの具体例
どのようなケースが無効となるのでしょうか。無効となるケースと無効とならないケースを、遺言書の種類別に見ていきましょう。
どの形式の遺言書でも効力が無効となるケース
どの形式の遺言書でも共通の、無効となるケースです。
・遺言者に事理を弁識する能力がなかった
・遺言者が15歳未満
・誰かと共同で書いてしまった
・錯誤による遺言
・公序良俗に反する内容
遺言者は、15歳以上であり、事理を弁識する能力を有していることが条件です。事理を弁識する能力とは、遺言の内容や遺言をすることによって発生する効力をきちんと理解できるだけの能力をいいます。
また、錯誤とは簡単にいえば勘違いです。勘違いにより遺言書を作成してしまった場合は、民法上無効となります。共同遺言は禁止ですので複数での遺言も無効です。
そのほか、公序良俗に反する内容とは、たとえば愛人にすべての財産を遺贈する場合などが該当します。
自筆証書遺言の効力が無効となるケース・ならないケース
自筆証書遺言について解説します。
自筆証書遺言の場合、無効となってしまうケースが多いです。自筆証書遺言の本文はすべて自筆で書かなければならず、署名は正式名でないといけません。また、いくら夫婦などの近しい関係であっても、必ず遺言書1通につき遺言者1名でなければなりません。
作成日付でよく失敗しがちなのが、「令和〇年〇月吉日」と書いてしまうパターンです。日付は、正確な年月日が特定できる書き方でなくてはなりません。
加筆や修正の方法が間違っているという場合も多いです。詳しくは後述しますが、無効になってしまうと、加筆修正する前の内容に戻ってしまうため、本当に望むことが実現できません。
一方、多くの書類においてNGであることが多いシャチハタは、意外にも認められています。せっかく作成するのですから、無効になってしまわないよう気をつけましょう。