4.非嫡出子の認知
遺言により、隠し子を認知できます。生前は明かせなかったとしても、死後であればカミングアウトできるという場合もあるでしょう。遺言書によって認知された子どもは、正式に被相続人の子どもとして認められ、相続に関して嫡出子と同様の権利を得ます。
非嫡出子として認知されるケースには、以下のようなものがあります。
・愛人との間に生まれた子ども
・内縁の夫や妻との間に生まれた子ども
5.未成年後見人の指定
相続人が未成年であり、遺言者が死亡することによって親権者がいなくなるといった場合、遺言者は子どもの未成年後見人を遺言によって指定できます。
遺言によって未成年後見人に指定された人は、指定されたからといって必ず就任しなければならないわけではなく、拒否することも認められています。
6.相続人の廃除と廃除の取消
相続人から被相続人に対し虐待や重大な侮辱などがあった場合、その人を相続人から廃除して相続の権利を剥奪できます。
たとえば、廃除の申し立てを行うケースには、以下のような場合があります。
・何年も働かない息子に意見するたびに暴力を振るわれている
・日常的に暴言を吐かれ続けている
なお、一度廃除しても取消は可能です。
7.遺産分割の指定と禁止
遺言者は、遺産分割の方法についても指定できます。遺産の分割を禁止することも可能ですが、これは相続開始から5年以内に限ります。
たとえば、以下のような場合に活用されることが多いです。
・被相続人の死亡直後により冷静な遺産分割協議が不可能
・相続人同士で揉め事が起こることが予想される
・相続人の中に未成年者がいる
8.遺言執行者の指定
遺言書の内容を執行する人を指定できます。遺言執行者になるのに特別な資格は必要なく、未成年や破産者でない限り誰でもなれますが、やらなければならないことが多く負担が大きくなることから、弁護士や司法書士などの専門家が選任されることが多いです。
遺言書の効力に有効期限はあるのか?
遺言書に有効期限はありません。何十年も前に作成されたものであっても正しい方法で書かれていれば有効です。いつでも撤回でき、内容の修正や新たにつくり直すことも可能です。新たにつくり直した場合は、古いものが無効となり新しい日付のものが有効になります。
また、遺言書の効力は、遺言者が亡くなったときから効力が生じます。遺言によって遺産を引き継ぐ見込みのある人であっても、遺言者が存命のうちは遺産に関して何の権利もありません。
遺言書に書いたら何でも実現される? 効力が及ばない場合とは
残念ながら、遺言書に書いたものはなんでも実現されるというわけではありません。たとえば、公序良俗に反する内容であるなど、効力が無効となるケースが存在します。
ほかにも、特定の人だけに有利な内容で遺産が分配され、相続人が最低限受けられるはずの権利を侵害された場合には、相続人の行動次第では遺言の効力が及ばなくなることもあります。
相続人が最低限受けられる権利のことを「遺留分」といいます。何人も相続人がいるにもかかわらず、特定の人1人にすべての財産を相続するといったようなケースは、言い換えればほかの相続人の遺留分を侵害するということになります。