(※写真はイメージです/PIXTA)

住宅・教育・老後の「人生3大支出」のうち、住宅費は特に大きな比重を占めるため、できる限り支出を抑えたいものです。多くの人は今後の住まいについて検討する際、持ち家と賃貸、どちらにすべきか迷うでしょう。本記事では、金融業界25年のキャリアを持つFP田中和紀氏による著書『FPが教える!マネーリテラシーを高める教科書』(ごきげんビジネス出版)から、持ち家と賃貸について、それぞれのメリット・デメリットを比較しながら解説します。

賃貸派の筆者が後悔したこと

では、購入面のポイントはどうでしょうか。長年賃貸だと資産は残らず、お金の面では購入したほうがよかったと思うこともあります。購入して価値が目減りしても、マンションの資産価値は、築30年で購入代金の半値ぐらいを維持しているのではないでしょうか。ただ半値で売却できたとしても、果たして購入は得でしょうか。

 

ちなみに私の実家は地方の戸建てで、45年前に購入し、ローン返済は終わっています。住宅ローンが20年ほどあり、昔は金利も高く、購入代金の2倍ほどを払って完済しました。そしてメンテナンス費など、あらゆる費用を合計すると、総費用は購入価格の2.5倍以上です。購入価格の半値で売却しても、2倍以上は支出しています。

 

となれば実際は、購入すると金利や維持費はかさんでおり、不動産会社がシミュレーションで掲載する数字では、足りないイメージなのです。

 

実例ではありますが、時期・場所・戸建てなどの前提条件がさまざまであり、単純比較は難しいでしょう。「賃貸より購入が金銭面で優っている」といわれていますが、その計算には、購入側の維持費が低く見積もられていたり、賃貸側の賃料減少が含まれていません。もちろん、これは物件によって違いがあり、今後の不動産価格も不確実です。

 

そもそも賃貸と購入で損得がはっきりしていれば、裁定取引が行われ、賃貸と購入のバランスはある程度、調整されるはず。たとえば、賃貸が購入よりも損となれば、多くの人が賃貸にせず購入するので、購入価格が上昇し適正価格になるはずです。

 

賃貸派は自由、購入派は安心を手に入れる

要するに、金銭面での損得は明確ではなく、運などの不確実な要素が損得を左右するのかもしれません。賃貸か購入かは金銭面で判断せず、ライフプランで判断したほうがよさそうです。ライフプランを踏まえ、賃貸のよい面は、自由に転居できること。転勤や家庭環境などの変化がありそうな人は、よい面といえるでしょう。

 

あと、ひとり暮らしで便利な都心に住みたい人なども、購入よりは賃貸が現実的でしょう。購入のよい面は、安心感があります。自分の終の棲家をもつことで、一生住むところが確保されます。簡単にいえば、賃貸派は自由、購入派は安心を手に入れる、ということです。

 

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田中 和紀

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