能力あるマネジャーでも「目が行き届く範囲」には限界が…
記事『300人が限界です…経営者が頭を抱える〈大規模組織〉のマネジメント問題。解決のカギを握る「ダンバー数」とは?』で解説したダンバー数にもとづいて、集団の人数を150人や200人以下に抑えたとしても、この人数を1人のマネジャーが直接管理するのは不可能です。
よく「優秀なマネジャーがいない」とこぼす経営者がいますが、いくら能力のある人でも、そもそも目が行き届く範囲には限界があります。
では、1人のマネジャーがきちんと面倒をみられる上限は何人か。私は7人だと考えます。
もちろんこれにも、理論的な裏づけがあります。
その1つが、「マジックナンバー7」です。アメリカの認知心理学者であるジョージ・ミラー氏が提唱したもので、「人間が短期的に記憶できる容量は7個前後」という法則です。
机に硬貨をばらまいた時、人間が一瞬で数を認識できるのは7枚程度。それ以上の硬貨が目の前にあっても、パッと見て枚数を把握するのは難しいということです。
経営学にも、「スパン・オブ・コントロール」という言葉があります。これは「1人の上司が直接管理できる範囲」を意味する言葉で、その人数は「多くて7人まで」とされます。
これらの理論が示すのは、「人間が7を超える大きな数字を扱うのは難しい」という事実です。1週間が7日なのも、おそらくこの原則に則ったからでしょう。私たち人間にとって、「7単位で1つ」のサイクルを回すのが、最も自然で受け入れやすいということです。
新規出店のプランも「7」の数字を意識する
もしあなたがマネジャーで、「チームがうまく回らない」「部下の面倒をみきれない」と感じているなら、自分が直接管理する人数を7人以下にしてみましょう。
30人のチームを抱えているなら、その中から5人を選んで、サブマネジャーとします。さらにその下に5人ずつのメンバーを割り振り、そのメンバーは5人のサブマネジャーが管理します。こうすれば、チームの1番上にいる自分も、そのすぐ下にいる5人も、自分がコントロール可能な範囲でマネジメントができます。
「Yahoo!BB」のコールセンターでも、13のユニットを作り、その下にいくつかのサブユニットを作って、さらにその下に現場部隊を置くという多重構造にしていました。こうして人数の少ない組織に分け、それぞれにユニット長、サブユニット長、部隊長を置けば、マネジメントしやすいからです。
人数が少なければ、管理能力がそれほど高くない人や経験が浅い人でも、無理なくチームを運営できます。マネジメント能力の高い人をわざわざ探してこなくても、今いる人材でチームを回し、成果を出すことが十分できるはずです。
新規出店のプランを考える際なども、「7」の数字を意識すると役立ちます。
業績が好調だからといって、何も考えずに出店数だけを増やすと、本部が現場をコントロールしきれなくなります。すると本社の指導や支援が行き届かず、現場のミスが続いてサービスの質も低下し、お客が離れるという悪循環に陥ってしまう。勢いのある飲食や小売のベンチャーによくあるケースです。
よって、「東京の店舗数が増えたらエリアを2つに分け、それぞれにエリア長を置く」「東京の出店エリアが増えたら、さらに2つのブロックに分け、それぞれにブロック長を置く」といった形でマネジメントの階層を増やしながら、1人のマネジャーが直接管理する数を「7」前後に抑える体制づくりをするとよいでしょう。
「困難は分割せよ」という言葉があるように、難しい仕事であっても、小さく分けることで対応が可能になります。「マジックナンバー7」&「スパン・オブ・コントロール」は、マネジメントにおけるさまざまな課題を解決する可能性を持った、応用範囲の広い法則と言えます。
三木 雄信
英語コーチングスクール「TORAIZ(トライズ)」主宰
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