(※写真はイメージです/PIXTA)

老人ホームへの入居費用は本人以外が負担すると贈与税として、あとから追徴課税を受けるケースもあると、税理士事務所エールパートナーの木戸真智子税理士はいいます。具体的にはどのようなケースなのでしょうか。本記事では、Aさん夫婦の事例とともに、老人ホーム費用が贈与とみなされてしまうポイントについて解説します。

「一時金1億円の老人ホーム」へ入居した70代夫婦

ここで事例を紹介します。

 

70代のAさん夫婦は、介護状態ではないものの、今後の生活に不安があるため、有料老人ホームに入所しました。社会人になって自立している子供達ともいつでも会えるようなアクセスのよい場所を探したため、一時金は1億円を超える金額ではありましたが、サービスは申し分のない施設でした。

 

まず部屋の面積がとても広々としており、窓からの見晴らしもよく、健康的に過ごせるようにするためのプログラムやレクリエーションも充実していました。フィットネスルームやプールも自由に使うことができ、食事も充実したメニューが取り揃えられていました。

 

ご夫婦は見学をして一目で気に入り、その施設への入所を決め、夫であるAさんが入居一時金を支払いました。そうして、快適な生活を過ごしていたある日、Aさんが癌を患っていることが発覚します。夫婦で過ごすはずのこの施設に入居して一年を過ぎたころ、Aさんは亡くなってしまいました。

 

一時金はどのような取り扱いとなるのか?

このようなケースの場合、一時金はどのような取り扱いになるでしょうか。先ほどお話したような通常必要と認められる生活費と考えられて非課税となるかどうか。もしならない場合にはどうなるかというと相続税の対象となってしまいます。

 

残念ながら、上記のようなケースの場合には、相続税の対象となってしまう可能性が非常に高くなります。

 

ポイントとして、やはり、施設が豪華で、1億円を超える一時金を支払うことによって、広々として景色のいい部屋に入居できること、フィットネスルームやプールなどの施設を無料で使用できることなど施設利用権を取得していると考えられるからです。また本人が介護状態ではないというところも判断基準となります。

 

そしてこれらの一時金は即時に償却されるものではなく、入居期間に応じて、月々償却されていくという形が多いため、前払いとしての要素があり、この一時金を相続により承継したという見解になってしまうことがあるためです。

 

もし今回のような状況で相続が発生した際に否認され、税務調査でAさんの妻へ追徴課税されてしまうと、その額は約2,300万円……ということにもなりかねません。たとえ、配偶者であったとしても、1億6,000万円を超えて、かつ法定相続分を超える相続財産があった場合には、課税されてしまうためです。

 

これらの入居一時金がすべて税金の対象となるわけではありません。通常必要と認められる範囲内であれば、もちろん課税の対象にはなりません。

 

 

木戸 真智子

税理士事務所エールパートナー

税理士/行政書士/ファイナンシャルプランナー

 

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