(※写真はイメージです/PIXTA)

老人ホームへの入居費用は本人以外が負担すると贈与税として、あとから追徴課税を受けるケースもあると、税理士事務所エールパートナーの木戸真智子税理士はいいます。具体的にはどのようなケースなのでしょうか。本記事では、Aさん夫婦の事例とともに、老人ホーム費用が贈与とみなされてしまうポイントについて解説します。

老人ホームの入所一時金は「贈与」になる?

近年、高齢化社会が進むにつれて、老人ホーム等の施設は年々増加してきており、まだまだ数は足りていないものの、サービスの種類は豊富になってきています。そのため、介護が必要になったから施設に入るという概念ではなく、介護認定なしでも入所できる施設も増えてきています。

 

まだ要介護認定を受けるほどではないけれども、自宅で過ごすには少し不安がある、という方へのサービスとして、サービス付き高齢者向け住宅、健康型、または住宅型有料老人ホーム、シニア向け分譲マンション、ケアハウス等が挙げられます。

 

これらの施設の入所に際して、必要になってくるのが「入所一時金」です。高級な施設の場合、非常に高額な一時金が必要になるというケースもあります。今回は、これらについて税金面からみていきましょう。

 

夫婦でも「贈与」になる可能性...課税対象にならない「生活費」とは?

たとえば、妻の入所のために夫が一時金を負担した場合にはどのようになるでしょうか。日本の税制度は基本的に個人単位で課税がされるため、夫婦といえども、贈与税や相続税の課税対象になることがあります。

 

かといって、家族間で日々支払われる金銭に対して、税金をそれぞれ課していくことは現実的ではないので、生活費や教育費などに関して課税の対象とはなりません。こちらに関して、法律では下記のように表現しています。

 

「扶養義務者相互間において生活費または教育費に充てるために贈与を受けた財産のうち、通常必要と認められるものについては贈与税の対象とはならない」

 

ここにおいて、上記の文章中の「通常必要と認められる」という部分がポイントになります。通常必要と認められるポイントはどのような範囲なのでしょうか。

 

生活費とは、通常の日常生活を営むのに必要な費用、そして治療費や養育費等が含まれます。教育費とは、子や孫などの教育上必要と認められる教育資金、教材費、文房具等で、これらは義務教育費にとどまりません。

 

この通常必要と認められるという部分がどの範囲になるのかということが、裁判でも争われるポイントになるのです。理由としては、明確な線引きができないからです。はっきりといくら以上という基準があるとわかりやすいのですが、そのような線引きが不可能なものなのでそれぞれの状況や内容を判断していくしかないということになってしまいます。

 

話を戻します。老人ホーム等の施設の入居一時金についてはどのように考えるかというと、非課税財産と認定されるものもあれば、課税財産とみなされてしまうこともあるのです。その判断基準は、下記のポイントで判断されます。

 

1.入居の目的……要介護状態となっているか/なっていないか
2.入居一時金の金額……数百万円もしくは数千万以上の高額なものかどうか
3.施設の設備……一般的な設備なのか/豪華な施設なのか

 

これらのポイントを総合的に判断していくことになります。

 

そして、もうひとつのポイントとして、通常必要とされる生活費に該当するかどうかは、必要なタイミングで必要な金額を負担しているかどうかも判断基準となります。

 

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