写真提供:坪井当貴建築設計事務所

知られざる「日本の住宅とその性能」について焦点をあてる本連載。今回のテーマは「住宅性能の基準」。住まいづくりについて調べ出すと、どうしても知るべき情報量が多く、調べれば調べるほど混乱してしまう方も少なくありません。そこで今回は、住まいづくりの際にこだわるべき住宅性能について、改めて4つの重要ポイントをわかりやすく再整理していきます。

従来の防蟻では通用しない外来種の被害が急増中

もうひとつの防蟻にかかる問題が、アメリカカンザイシロアリと呼ばれる外来種の被害が急増していることです(関連記事:『外来シロアリに食い潰される!「日本の木造の家」全滅の危機)。この外来種は、日本の在来種のシロアリと生態がまったく異なり、非常にやっかいです。

 

在来種は、「地下シロアリ」と呼ばれ、十分な水分がないと生きていけないので、地中に巣を作り、「蟻道」と呼ばれるトンネルを作り、地中の巣から家の構造材に、いわば蟻道を通って通勤して、木を食べます。

 

そのため、住宅の下部の蟻害リスクが高く、また北側の浴室部分等の水分の多い箇所のリスクが高くなります。そしていままでは、床下を点検して、「蟻道」がなければシロアリがいないとある程度判断することが可能でした。

 

[図表3]地下シロアリの蟻道
写真:地下シロアリの蟻道

 

ところが、アメリカカンザイシロアリは、乾燥させた柱等の構造材に残るわずかな水分で生息することが出来ます。そのため、家の構造材自体に巣を作り、柱・梁、さらには屋根の構造材である小屋組等にまでどんどん巣を広げていくのです。

 

輸入家具に紛れて侵入してきたり、つがいで羽アリが飛んできて自分で羽を落として家に侵入してきたりするようです。

 

このアメリカカンザイシロアリがやっかいなのは、従来の地盤面から1mまでの防蟻では通用しないということ、そして基本的には蟻道を作らないので発見が非常に難しいという点です。

 

[図表4]地下シロアリと乾材シロアリの違い
[図表3]地下シロアリと乾材シロアリの違い

 

これから新築するのならば、アメリカカンザイシロアリの蟻害リスクを鑑みて、永続性能ある防蟻処理を主要構造部すべてに行うべきです。そのためのコストは、得られる安心感や資産価値の維持を鑑みるととてもリーズナブルです。

 

ただ住宅業界において、このアメリカカンザイシロアリの問題を認識している工務店やハウスメーカーは、まだまだ少ないのが現状です。少なくても工務店・ハウスメーカー選びの際には、シロアリ保証の対象にアメリカカンザイシロアリが含まれるかどうか確認するべきでしょう。

 

ただし残念ながら、現時点でアメリカカンザイシロアリをシロアリ保証の対象に加えている工務店・ハウスメーカーは極めてまれであるのが実情です。

 

当社が提携している性能にこだわっている工務店・ハウスメーカーですら、対応が不十分な会社が散見される状況なので、一般消費者がそのような意識の高い工務店等を見つけ出すのは簡単なことではないのが残念なことです。

 

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