写真提供:オイカ創造所有限会社

知られざる「日本の住宅とその性能」について焦点をあてる本連載。今回のテーマは「太陽光発電」。最近、高性能な住まいとセットに語られることが多くなっていますが、実際はどうなのでしょうか。今回は、太陽光発電に関するありがちな誤解に対して、東京都および東京大学工学系研究科准教授、前真之氏の回答を中心に説明していきます。

なぜか蔓延している太陽光発電に対する誤解

太陽光パネルの設置は売電価格が下落しているので、ペイしないと誤解されがちですが、そんなことはなく、いまだに高い収益性を望めます。不思議なことに太陽光発電自体に対して、否定的な意見が非常に根強くあり、特に東京都の太陽光の設置義務制度についての誤解もとても目につきます(関連記事:『売電価格下落で「太陽光発電にうまみなし」という大きな誤解』)。

 

これらの誤解に対して、東京都はホームページで説明しています。また、東京大学工学系研究科准教授の前真之氏が、自ら各方面の専門家にヒアリングを行った結果をまとめて「太陽光ファクトチェック」として、公表しています。

 

今回は、太陽光発電に関するありがちな誤解に対して、東京都および前先生の回答を基に、適宜筆者が補足して質問に回答する形で説明していきます。

 

Q1.太陽光発電を載せていない人にとって、再エネ賦課金の負担がさらに増えるのでは?

再エネの普及により、買取のための再エネ賦課金の負担が増えているのは事実です。ただし、そのほとんどはメガソーラーなど大規模な太陽光によるものです。住宅用の10kW未満の太陽光の影響は比較的軽微(図表1)であり、金額はすでにピークアウトしています。固定価格買取期間が10年と短く、また最近は買取価格が引き下げられたこともあり、住宅に太陽光発電が普及したとしても、再エネ賦課金への影響は大きくないものと考えられます。

 

【図表1】

 

 

Q2.太陽光発電は他の発電に比べてコストが高いのでは?

技術の進歩により、2020年においてすでに太陽光発電は住宅用も含め、他の電源とそん色ない経済性を有しており、2030年にはむしろ他電源よりも安価となると予測されています(図表2)

 

【図表2】

 

Q3.太陽光は想定通りに発電しないのでは?

太陽光発電の経済性検討においては、一般的に発電容量1kWあたりの発電量を1,000kWh/年とする場合が一般的ですが、経産省のゼロエネルギーハウス(ZEH)の実績では、ほとんどの都道府県で1,000kWh/年を上回る発電ができています。太陽光を載せた住民の人の多くは、発電量とコスト削減効果に満足しています。

 

なお、資源エネルギー庁と一般社団法人環境競争イニシアチブによる「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス実証事業調査発表会)2021」によれば、ZEHの補助対象住宅のPV(太陽光発電)の創エネ量は⑧実績値が⑤設計値を大幅に上回っています(図表3)

 

【図表3】

 

Q4.発電量が低下したり機器が故障したりするのでは?

太陽光発電も通常の設備と同じように、運用している間に効率が低下します。現状では多くのメーカーが、「システム保証」を10~15年としており、この期間に発電ができなくなった場合はメーカー負担で修理されます。発電量に対する「出力保証」は15~25年が一般的です。直流の電気を交流に変換する「パワコン」は10年程度で交換するのが一般的ですが、屋根に載せる「パネル」の方は数十年にわたり利用できると予想されます。

 

2017年4月のFIT制度改正により、メンテナンス(保守点検)が義務化されており、定期的な点検により発電量が維持されることが期待されます。

 

Q5.パネルの重さにより耐震性が低下するのではないか?

住宅屋根載せにおいて一般的な発電容量である5kW分の太陽光パネルの重量は300kg、設置架台の重量は100kg程度で、屋根に載る重量は合計で400kg程度です。瓦屋根の重量は4000kg程度あるので、太陽光パネルによる追加重量は大きくありません。通常の耐震設計で問題ありません。

 

なお、新築や既存住宅のフルリノベーションの場合は、太陽光パネルを設置する前提で許容応力度計算を行い、耐震性能を確認すれば全く問題はありません。

 

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