苦労を共にした一人娘へ「年110万円」を17年間贈与したシングルファザー、死去…2年後、税務調査でペナルティ「480万円」の悲劇【税理士が解説】

苦労を共にした一人娘へ「年110万円」を17年間贈与したシングルファザー、死去…2年後、税務調査でペナルティ「480万円」の悲劇【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

子供の名義で作った口座へ生前贈与を行っていても、後の税務調査で多額の追加徴税が取られてしまうケースがあると、税理士事務所エールパートナーの木戸真智子税理士はいいます。具体的にはどのようなケースでしょうか。本記事では、Aさんの事例とともに贈与の注意点について解説します。

一人娘へコツコツ貯金をしていたシングルファーザー、死去…

31歳になるAさんは中学生のときに母親が病気で他界したため、父親のBさんと二人で暮らしてきました。Aさんが28歳で結婚してからは、Bさんは孫の顔を見るのを楽しみに過ごしてきました。Bさんは仕事と子育て一筋で、父子家庭になってからは初めは不慣れな家事もこなしながら、ひたすら頑張ってきました。

 

もうすぐ定年を迎えて、のんびり旅行でも行こうと思っていた矢先……Bさんは仕事中に脳梗塞で他界してしまいました。

 

あまりにも急な出来事でした。突然のことで、Aさんもどうしていいかわからないながらも、Aさんの友人の税理士に相続税の申告についても相談をして、辛い気持ちのなか、どうにか申告も済ませました。

 

父の死から2年後、税務署から連絡が…

それから2年目、税務調査の連絡が税務署から来ました。特に思い当たることはないのでなにもないだろうと当日を迎えたのですが……

 

BさんがコツコツためていたAさん名義の通帳があることが判明し、名義預金として追徴課税されてしまうことになってしまいました。Bさんは娘のために、毎月コツコツと貯金をしてくれていたのでした。貯金が始まったのは17年前の母親が他界して少ししたあとのことでした。将来のことをいろいろ考えて、娘のために……との思いからだったのでしょう。

 

Bさんが17年間コツコツ貯めてくれていたその金額は約1,600万円になっていました。これが名義預金となったことで追徴課税は約480万円に……。

 

一体どうしてこのようなことが起きるのでしょうか。

口座名義は子供でも…管理が親だと「追徴課税」に

ここで名義預金について解説をします。

 

名義預金とは本人が存在を知らない、もしくは管理をしていない預金のことを言います。名義だけは子供でも親が管理していたら、それは親の預金とみなされることになります。名義預金とみなされた通帳については、たとえ名義が子供であっても、親に相続が発生したら親の相続財産とみなされます。

 

名義預金とみなされるポイント

名義預金とみなされるケースはいくつかポイントがあります。

 

・本人が口座の存在を知らない。
・本人が管理していない。
・預金残高が本人の所得状況と比べて不自然に多い。
・口座の届出印が本人ではなく、親の印鑑になっている。
・口座開設をした金融機関が本人の住所ではなく、親の住所の近くの支店になっている。
・預金が預けられたままで口座の引き落としがまったくない。

 

これらにあてはまるような通帳であれば、名義預金となってしまうのです。Aさんの父Bさんも1年に110万円を超えないように毎年贈与していたようですが、たとえ、毎年110万円ずつであっても、贈与をしたことにはなりません。

 

贈与とは、贈与を受ける側も了承を得ていることがポイントになりますので、本人が知らない、了承を得ていないとなれば、その贈与は無効になってしまうのす。子供のために内緒で貯金を……というケースは多くあると思いますが、このあたりはしっかり押さえて適正な贈与をしましょう。

 

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