〈愛する息子たちへ〉寡黙な父からの贈与は非課税枠内だったはずが…税務調査でまさかの「追徴課税1,200万円」!思わず抱いた税務官への殺意【税理士が解説】

〈愛する息子たちへ〉寡黙な父からの贈与は非課税枠内だったはずが…税務調査でまさかの「追徴課税1,200万円」!思わず抱いた税務官への殺意【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

贈与当時は問題なく済んだはずでも、税制度の改正によって非課税枠を超えてしまうケースを度々散見すると、税理士事務所エールパートナーの木戸真智子税理士はいいます。具体的にはどのようなケースでしょうか。本記事では、Aさんの事例とともに相続時精算課税制度、暦年課税制度の注意点について解説します。

「相続時精算課税制度の改正」で非課税枠は増えるが…

2024年1月より、相続時精算課税制度が改正されることになりました。

 

これまで累計2,500万円までの贈与については、贈与税はかからないという制度でしたが、こちらに追加で年間110万円までの贈与についても贈与税がかからなくなりました。これまでよりもさらに利用しやすくなる相続精算課税制度。これにより年間110万円までの贈与をより進めやすくなるのではないかと思います。

 

しかし、この相続時精算課税制度は押さえておくべきポイントがいくつかあります。

 

①一度相続時精算課税制度を選択すると、暦年課税制度に戻すことはできない。

②累計2,500円を超える贈与は20%の税率で贈与税が課税される。

③相続時精算課税制度で贈与した財産はすべて相続財産に含められる。

 

なお、上記の③については。来年からの新しい相続時精算課税制度では年間110万円の贈与については、累計2,500万円とは別枠となり、贈与税も相続税も対象外となります。申告も不要です。

 

これまで累計2,500万円まで非課税だったものが追加で年間110万円の非課税枠が増えたことになります。申告も不要となる年間110万円の贈与は暦年課税でも相続時精算課税でも利用しやすくる反面、贈与において気を付けるポイントがあります。事例をもとにご紹介します。

76歳・会社社長の父は引退間近だったが…

<事例>

Aさん 76歳会社役員

妻   72歳専業主婦

長男  42歳会社員

次男  39歳会社員

 

大阪で小さな町工場を営んでいたAさんは、会社社長の引退に向けていろいろと準備をしていました。会社は次男が引き継ぐことになっており、社長交代のために挨拶回りもしていました。

 

Aさんは創業してからこれまで仕事一筋でした。バブル全盛期のときはとても羽振りがよかったのですが、その後一気に不景気に落ち込み、経営が苦しい時期もあり、取引先が持ち堪えられず倒産していくこともありました。しかしAさんは苦難を乗り越え、どうにか従業員を守りながら経営をしてきたのです。

 

経営をしているといろいろな苦難がありますが、家族にはそんな大変さを見せることはありませんでした。しかし、休みもなく働くことも多かったために、妻や特に子供達には寂しい思いをさせてきたこともあります。そんな父に対して、家庭を守ってきた母の大変さも見てきた長男は、反発したこともありました。

 

そんな経緯もあり、長男は会社を継ぐ選択はせず、会社員となりました。一方で次男は父親の会社を継ぐことを決心し、大学卒業して4~5年、会社員をしたあとに父親の会社に勤めました。

 

そんなときに起こった突然の不幸。家族全員が予期せぬ出来事でした。

 

父、急逝…遺品整理で見つかった一通の遺言書

寡黙で仕事一筋の父親で、家族は父親の財産をすべては把握していませんでした。気持ちの整理はつきませんでしたが、父親の持ち物の整理をしていると、一通の遺言書が見つかりました。Aさんは会社の引退に向けた準備とともに相続のことも準備を進めていたのでした。

 

遺言書にはこれまでの感謝の気持ちと、財産分与について書かれていました。財産分与の内容は下記のとおりでした。

 

・妻には不動産と預金、株式生命保険金

・長男には預金

・次男には承継する会社の株式と預金

 

長男と次男には均等になるように考えた結果の内訳となっていました。寡黙な父親がここまで考えてくれていたことも知らず、突然の別れとなり、伝えたいことがたくさんあたのに……とやるせない気持ちになりました。しかし、父親の気持ちを汲み取るためにも、家族は父親名義の財産を整理し、家族で励まし合いながらなんとか相続の手続きを終えました。

 

そして、少し落ち着いた2年後、税務署から税務調査の連絡の電話が……。

 

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