今回は、一人ひとりの社員に「利益意識」を持たせる方法について説明します。※本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏の著書、『経営者の財務力を一気にアップさせる本〔補訂版〕』(東峰書房)の中から一部を抜粋し、図を徹底活用した貸借対照表・損益計算書の見方をご紹介します。
明確な数字を見ていなければ「利益意識」は持ちづらい
“「このままでは利益が出ない!」、「もっと生産性向上を考えよ!」、と、社員には日頃からやかましく言うんですが、いくら言っても、響かないんですよ……”
と、グチをこぼされる経営者がおられます。
“どうしてウチの社員は危機感がないんですかねぇ……”
となるわけです。
“ところで、社員はウチの利益や生産性をわかっているんですか?”
と質問します。
“朝礼や会議で業績を概ね伝えていますから、そりゃあわかっているはずですよ!”
このような答えが多いです。
“えっ?それじゃあ採算表などの資料は見せていないんですか?”
と言うと、
“採算表までは見せていないです。そこまで見せる必要ありますか?”
とか、
“数字だけ一人歩きして、間違った使い方をされては困ります!”
と言われる方がいらっしゃいます。
心のどこかのホンネの部分で、
“利益がどれだけ出ているか、原価がどれだけか、知られたくない”
“彼らがみたって、どうせわかりっこない”
という思いがあるのを感じるときがあります。
しかし、社員にしてみれば、明確な数字を見ていないのに、
“利益意識を持て!”
と言われても、ピンと来ないのは当然です。
グラフで会社の財務状況を見せて「現状把握」させる
社員は社員で、
“数字を見せないのは、きっとそれなりの利益が出ているんだろう”
“あれだけ頑張っているんだから、儲かっているだろう”
と思いがちです。経営者の思いとは、まったくことなります。だから、経営者の言葉が届かないのです。
社員に危機感を持ってもらいたいなら、その現状を、明確に示してあげることです。P/L(損益計算書)だけでも、本連載にあるようなグラフで見せればよいのです。細かな勘定科目までなくても構いません。
全体を大枠でつかんで、売上高、売上総利益、経常利益など、ポイントとなる数字は具体的に社員に伝えてほしいですね。
株式会社アイ・シー・オーコンサルティング
代表取締役
昭和40年 大阪府生まれ。
平成元年 関西大学卒業後、兵庫県の中堅洋菓子メーカーに入社。経理、総務、人事、生産管理、工程管理、広報など、主たる管理部門で実力を発揮。
平成17年 株式会社アイ・シー・オーコンサルティングに加わり、経営指導業務を開始する。
以降、長年の現場実務経験と、師匠である井上和弘(アイ・シー・オーコンサルティング会長)の《井上式経営術》を武器に、日々、中小企業の黒子としての経営指導に邁進している。
指導実績:財務改善、税務・銀行対策、労務問題改善、経営企画、管理会計、IT・システム化、事業承継など。
また、日本経営合理化協会主催「後継社長塾」(塾頭:井上和弘)、に塾長として参加し、後継社長の育成にも尽力している。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載経営者の財務力を一気にアップさせるB/S、P/Lのグラフ化
株式会社アイ・シー・オーコンサルティング
会長
昭和17年大阪生まれ。早稲田大学卒。昭和59年大手コンサルティング会社を経て、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングを設立。企業再建の「名外科医」として、赤字会社の中に入り込み、社長や役員を叱りとばしながら思い切った手を果敢に打って短期間に収益を回復させる。経営指導暦は40年を超え、これまで400社以上を直接指導。オーナー社長のクセを知り尽くし、1社も潰さず、一部上場はじめ株式公開させた企業も十数社にのぼる。
著書:『儲かるようにすべてを変える』『カネ回りのよい経営』『後継者の鉄則』(いずれも日本経営合理化協会出版局)、『社内埋蔵金をお金にする知恵』(中経出版)『儲かる会社をつくるには、赤字決算にしなさい』(ダイヤモンド出版)など。
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