グラフ化したP/Lから「銀行への返済原資」を把握する方法

今回は、グラフ化したP/Lから「銀行への返済原資」を把握する方法を説明します。※本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏の著書、『経営者の財務力を一気にアップさせる本〔補訂版〕』(東峰書房)の中から一部を抜粋し、図を徹底活用した貸借対照表・損益計算書の見方をご紹介します。

「資金繰り」を悪化させる銀行借入

P/Lをグラフにすると、いろいろな費用が見えてきます。

 

しかしその中に、「銀行借入返済」という科目はありません。とはいえ、銀行借入をし、土地や建物など、何かを購入したなら、当然のことながら、返済しなければなりません。なのに、その返済原資の出所が、案外理解されていないのです。

 

借入返済の原資となり得るのは、図表のグラフ中の、赤線枠で囲んでいる部分です。つまり、減価償却費+純利益ということですね。下のグラフで見ると、ほんのわずかしかありません。このなかから、返済原資を捻出しなければならないのです。

 

【図表 借入返済原資はどこにある?】

返済原資として使用可能なおカネは、減価償却費と純利益だけ。しかしこれは、理論上の、残るおカネの大きさを示すものにすぎない・・・。

 

 

銀行借入があるだけで、資金繰りを圧迫するのが、おわかりいただけると思います。

「減価償却+純利益」の現金が手元にない理由

ところがそう言うと、“純利益と減価償却を足したほど、現金がないんですけど?”とおっしゃられる経営者に出会うことがあります。そうです、ここが勘違いしやすいところなのです。

 

P/Lで言う、「減価償却費+純利益」は、いわば、ある一定期間内に生み出されるはずの、理論上のキャッシュです。年度末にそれだけの現金がある、というわけではないのです。

 

例えば、

 

“売上金の一部が未回収になっている”

“実際に入金されるのは、数か月先になっている”

“在庫が多く、その支払いで現金がかなり減っている”

“その期間中に、新たな設備を買ってしまった”

 

といった場合、「減価償却+純利益」に該当するほど、現金は残りませんし、ありません。

 

だから、

 

“未収金は早く回収しなさい!”

“回収サイトを縮めなさい!”

“在庫を減らしなさい!”

 

と、うるさく言うのです。

 

しかし、より多くのキャッシュを残す方法は、あるのです。それが、オフバランスなどによって、“税引前利益をマイナス(=赤字)にしなさい!”という考え方です。

 

詳しい説明は、次回にて紹介します。

 

銀行借入の返済は、損益計算書には、どこにも出てきません。しかし、借入があれば返済のおカネは必要です。そのおカネの出所は、減価償却費+純利益なのです。

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    株式会社アイ・シー・オーコンサルティング 代表取締役

    昭和40年 大阪府生まれ。

    平成元年 関西大学卒業後、兵庫県の中堅洋菓子メーカーに入社。経理、総務、人事、生産管理、工程管理、広報など、主たる管理部門で実力を発揮。

    平成17年 株式会社アイ・シー・オーコンサルティングに加わり、経営指導業務を開始する。
    以降、長年の現場実務経験と、師匠である井上和弘(アイ・シー・オーコンサルティング会長)の《井上式経営術》を武器に、日々、中小企業の黒子としての経営指導に邁進している。

    指導実績:財務改善、税務・銀行対策、労務問題改善、経営企画、管理会計、IT・システム化、事業承継など。
    また、日本経営合理化協会主催「後継社長塾」(塾長:井上和弘)、に塾長補佐として参加し、後継社長の育成にも尽力している。

    著者紹介

    株式会社アイ・シー・オーコンサルティング 会長

    昭和17年大阪生まれ。早稲田大学卒。昭和59年大手コンサルティング会社を経て、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングを設立。企業再建の「名外科医」として、赤字会社の中に入り込み、社長や役員を叱りとばしながら思い切った手を果敢に打って短期間に収益を回復させる。経営指導暦は40年を超え、これまで400社以上を直接指導。オーナー社長のクセを知り尽くし、1社も潰さず、一部上場はじめ株式公開させた企業も十数社にのぼる。

    著書:『儲かるようにすべてを変える』『カネ回りのよい経営』『後継者の鉄則』(いずれも日本経営合理化協会出版局)、『社内埋蔵金をお金にする知恵』(中経出版)『儲かる会社をつくるには、赤字決算にしなさい』(ダイヤモンド出版)など。

    著者紹介

    連載経営者の財務力を一気にアップさせるB/S、P/Lのグラフ化

    本連載は、2015年4月30日刊行の書籍『経営者の財務力を一気にアップさせる本〔補訂版〕』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    経営者の財務力を一気に アップさせる本〔補訂版〕

    経営者の財務力を一気に アップさせる本〔補訂版〕

    古山 喜章,井上 和弘

    東峰書房

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