今回は、「グラフの組み合わせ」で会社の財務状況を可視化する方法を説明します。※本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏の著書、『経営者の財務力を一気にアップさせる本〔補訂版〕』(東峰書房)の中から一部を抜粋し、図を徹底活用した貸借対照表・損益計算書の見方をご紹介します。

単独グラフだとB/SとP/Lの「繋がり」が見えない

B/SやP/Lを面積グラフで表していますが、"B/SとP/Lはどう繫がっているのだろうか?”という素朴な疑問があります。

 

表す意味は異なれど、繫がりはあります。また、繫がりのない部分もあります。ここがクセモノなのです。

 

例えば、図1のようにある、B/S面積グラフを縦に、真ん中から左と右に分けます。そして、その間にP/L面積グラフを入れて説明します。それが、図2です。

 

【図1】

 

【図2】

 

まん中にP/L(損益計算書)があり、その左側は、B/Sの"資産の部”、反対の右側は、B/Sの"負債・資本の部”です。

 

例えば、P/Lの売上高は、B/Sの「資産の部」のうち、現預金、売掛金、受取手形、のいずれかに繫がってゆきます。

 

P/Lの原価は、B/Sの「負債の部」のうち、買掛金へと繫がってゆきます。つまり、それぞれ矢印のある方向へと繫がってゆきます。

 

"原価の大きさと買掛金の大きさが違うじゃないですか?”という疑問があるかもしれません。

 

それは、P/Lの原価は一定期間の累計額で、B/Sの買掛金は、払い終えていない残高が表されるからです。払い終えている原材料費は、買掛金から消えてゆきます。払い終えていない、言い換えれば、払わなきゃならない、ということで、だから、負債になるのです。

在庫や土地などP/Lだけでは見えてこない科目に注意

やっかいなのは、B/Sの白色部分です。左側なら、在庫、土地、投資、右側なら、短期借入金、長期借入金、などです。

 

図2を見てのとおり、直接的にP/Lに繫がりません。ということは、いくらP/Lだけを眺めていても、これらの科目には、意識が働かないのです。まったく見えてこないのです。なのに、これらの科目はB/S面積の内、大きな部分を占めています。

 

言えることは、B/S左側の白色部分が増えれば、B/S右側の白色が増えてくる、ということです。で、当然のことながら、白色部分が増えれば総資産は増えます。売上高に対する回転率は悪化し、総資産に対する経常利益率(ROA)も悪化します。自己資本比率も悪化します。

 

だから、オフバランスをうるさく言うのです。極端に言ってしまえば、この白色部分がまったくない、というのが、望ましいわけです。

 

とはいえ、そうもいかない科目もあるでしょう。もちろん、白色部分以外の科目も管理・コントロールが必要です。

 

が、まずは、P/LとB/Sの繫がりを理解し、この白色部分を最低限度におさえることを考えてほしいのです。

 

P/Lの弱点は、在庫、土地、投資、借入金、などが見えないこと。しかし多くの場合、これらの要素が資金繰りを悪化させるのです。P/Lだけでは見えない部分があることを知ろう!

本連載は、2015年4月30日刊行の書籍『経営者の財務力を一気にアップさせる本〔補訂版〕』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

経営者の財務力を一気に アップさせる本〔補訂版〕

経営者の財務力を一気に アップさせる本〔補訂版〕

古山 喜章,井上 和弘

東峰書房

数字が苦手な人にこそ読んで欲しい! 本書では、会社経営にまつわる数字を読み解き財務力をアップさせる方法を解説します。数字が苦手だからこそとことんわかりやすく理解する方法を見出した筆者。そのノウハウをお伝えし、経…

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