リスク・パリティで考えるポートフォリオの資産保有比率と目先の変動性【マクロストラテジストが解説】

リスク・パリティで考えるポートフォリオの資産保有比率と目先の変動性【マクロストラテジストが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

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株式と国債で考える「リスク・パリティ」

1.相関係数

そのリスク・パリティとはどのような運用手法なのか。もっとも単純な例として、株式と国債のポートフォリオで考えてみます。

 

[図表2]に示すとおり、米国株式と米国国債の相関係数は、長期でみると「ほぼゼロ」で、無相関です。

 

[図表2]米国株式と米国国債は長期では「ほぼ無相関」
[図表2]米国株式と米国国債は長期では「ほぼ無相関」

 

「米国株式と米国国債の相関係数はマイナス(=両者は逆相関)ではないか」と思われた方もいらっしゃると思います。

 

たしかに、[図表3]に示すとおり、区間を限定すると(→[図表3]では過去30ヵ月)、2002年頃から2021年頃まではマイナスでしたが、それ以前や2022年以降はプラス(順相関)です(→日次か週次か月次か、どのくらいの期間で計測するかで、数値はいくぶん変わります)。

 

[図表3]米国株式と米国国債の相関係数(トータルリターン指数;過去30ヵ月)
[図表3]米国株式と米国国債の相関係数(トータルリターン指数;過去30ヵ月)

 

考え方しだいですが、筆者は、①両者の相関はプラスになったりマイナスになったりするという点、②最近はプラスであるという点で、全区間のサンプルでみた「無相関」で考えています。

 

米国株式と米国国債のように値動きの組み合わせが「ランダム」な資産を組み合わせると、値動きが同じ方向に動く資産を組み合わせる場合と比べて、ポートフォリオのリターンは安定します。

 

2.変動性

次に、変動性をみます。[図表4]に示すとおり、米国株式の変動性と米国国債の変動性とを比べると、だいたい「3対1」(→日次や週次では4対1)です。

 

[図表4]米国株式と米国国債の変動性はおよそ「3対1」
[図表4]米国株式と米国国債の変動性はおよそ「3対1」

 

[図表4]から想像できることがひとつあります。それは、たとえば、よく推奨される「株式60%/国債40%のポートフォリオ」を組むと、そもそも変動性の大きい株式をたくさん持つわけですから、株式に偏ったリスクを取ることになるということです。

 

言い換えれば、株式市場がいいときにはポートフォリオは堅調ですが、そうでないときにはポートフォリオは不調です。

 

では、どうすれば、安定したポートフォリオをつくれるか。

 

ひとつの答えは、この「株式と国債の変動性の比」、すなわち「3対1」をひっくり返して、株式25%/国債75%のポートフォリオを組むことです。そうすると、株式と国債のそれぞれの資産で取るリスクが等しくなります。これが「リスク・パリティ」、リスク均等という言葉の由来です

 

※ 実際には、株式と国債以外の多くの資産を用いるのみならず(たとえば、コモディティやインフレ連動債など)、金融市場の考えられる局面をいくつかに分けて(たとえば、高成長/低成長/高インフレ/低インフレ;ダリオは『シーズン』と呼ぶ)、それぞれの局面でワークすると思われる資産の集まり(ポートフォリオ)を考え、局面・シーズンどうしや、ポートフォリオに含まれる資産どうしのリスクを均等にするなど、いくぶん複雑な処理を行っています。

 

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