リスク・パリティで考えるポートフォリオの資産保有比率と目先の変動性【マクロストラテジストが解説】
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最近の金融市場の“特異性”
[図表6]に示すとおり、足元では、株式の変動性が小さく、国債の変動性が高く、この2つに「かい離」が見られます(→なお、この図は最近の変動性の変化を捉えるために、日次で計算したものを、月末営業日ベースで表示しています)。
同じ状況は、今後の米国株式市場と米国国債市場の予想変動性をあらわすVIX指数やMOVE指数でも確認できます。
リスク・パリティ運用は変動性の変化に合わせて、保有比率を変えますから、いまは、変動性が低い株を多く持つ、変動性が高い国債を減らすということが起きていると考えられます。
両者の保有比率を仮想的に計算しますと、[図表8]に示すとおり、現在は歴史的にみても、株式の保有比率が高く、国債の保有比率が低い状態と考えられます(→リスク・パリティ運用に脚光が当たるようになったのは2000年代中盤頃からです)。
今後は、(現在は極値付近である)この保有比率が平均回帰することが考えられます。すなわち、株式を減らして、国債を増やすような出来事、言い換えれば、株式の変動性が高まるようなイベントが起きる可能性があります。
秋は「株式市場の変動性が高まる季節」
株式の保有比率減少と国債の保有比率上昇は、「株式の変動性が高まるのではなく、国債の変動性が下がることによって起きるのでは?」という考えもあるでしょう。
ただ、「秋は株式市場の変動性が高まる季節」です。[図表9]に示すとおり、米国株式市場の予想変動性を示すVIX指数の1年を通じた動きを取りますと、過去の長期平均【青】では、8月から10月にかけて変動性が高まることが確認できます。他方の今年これまでの動き【赤】は、その長期平均に沿って動いているようにみえます。
過去の変動性が高まった出来事として、2008年9月のリーマン・ショック、2007年8月のパリバ・ショック、2001年9月の米同時多発テロ、1998年8月から9月にかけてのロシア財政危機~LTCM危機、1997年7月にタイから始まるアジア通貨危機、1990年8月の湾岸戦争、またデータの範囲を超えますが、1987年10月の『ブラック・マンデー』、さらに古くは1929年10月の『暗黒の木曜日』などが挙げられます。
もちろん、[上記図表9]は過去の平均ですから、毎年毎年、夏から秋にかけて変動性が高まるわけではありません。
とはいえ、現在の株式市場と国債市場の変動性の違いや季節性にかんがみ、目先は、株式市場の変動性が高まる可能性について心に留めておいても損はないでしょう。
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重見 吉徳
フィデリティ・インスティテュート
首席研究員/マクロストラテジスト
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フィデリティ投信株式会社
マクロストラテジスト
大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了後、農林中央金庫にて、外国証券・外国為替・デリバティブ等の会計・決済業務および外国債券・デリバティブ等の投資・運用業務に従事。
その後、野村アセットマネジメントの東京・シンガポール両拠点において、グローバル債券の運用およびプロダクトマネジメントに従事。
アール・ビー・エス証券にて外国債券ストラテジストを務めた後、2013年にJ.P.モルガン・アセット・マネジメントに入社、2019年同社マネージング・ディレクターに就任。ストラテジストとして、個人投資家や販売会社、機関投資家向けに経済や金融市場の情報提供を担う。2020年8月、フィデリティ投信入社。
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