1. 経済動向と住宅市場
日本経済は、コロナ禍で低迷していた経済社会活動の正常化に伴い回復の動きが続いている。8/15に公表予定の2023年4-6月期の実質GDPは前期比+0.8%(前期比年率+3.1%)と3四半期連続のプラス成長となったと推計される1。
輸出が財、サービスともに高い伸びとなり、外需が成長率を押し上げるほか、高水準の企業収益を背景に設備投資も2期連続でプラスに寄与する見込みである。
経済産業省によると、4-6月期の鉱工業生産指数は前期比+1.3%と3四半期ぶりの増産となった(図表-1)。業種別では、供給制約緩和により自動車が高い伸び(前期比+5.9%)となったほか、鉄鋼(+1.9%)、非金属(+2.1%)、電子部品・デバイス(+2.8%)も堅調な動きとなった。
ニッセイ基礎研究所は、6月に経済見通しの改定を行った。実質GDP成長率は2023年度+1.0%、2024年度+1.6%を予想する(図表-2)2。2023年後半は、米国経済の景気後退に伴う輸出の減少などから減速するものの、海外経済の持ち直しが見込まれる2024年以降は輸出の回復を主因として成長率が高まる見通しである。
住宅市場では、住宅価格が上昇するなか、2023年6月の新設住宅着工戸数は71,015戸(前年同月比▲4.8%)、4-6月累計では約20.8万戸(前年同期比▲4.7%)となった(図表-3)。内訳をみると、新築分譲マンションの着工は増加したが、それ以外(持家、貸家、分譲一戸建住宅)は減少した。
2023年6月の首都圏のマンション新規発売戸数は1,906戸(前月同月比▲0.4%)、4-6月累計では5,532戸(前年同期比▲18.8%)と減少が続いている(図表-4)。
平米単価は104.1万円(前年同月比+1.6%)、販売在庫は4,951戸(前年比▲121戸)となった。供給量が少ないことから売れ行きは良好で初月契約率は67.8%(前年同月比+0.2%)と高い水準を維持している。また2023年上期の東京23区の平均価格は1億2,962万円(前年同期比+60.2%)と1973年の調査開始以来、初めて1億円を超えた。
東日本不動産流通機構(レインズ)によると、2023年6月の首都圏の中古マンション成約件数は3,111件(前年同月比+3.6%)、4-6月累計では8,802件(前年同期比▲1.9%)となり、8四半期連続で減少した(図表-5)。中古マンション市場では取引価格が上昇し成約件数が減少するなか、在庫戸数は2022年6月以降13カ月連続で前月対比増加している。
また、日本不動産研究所によると、2023年5月の住宅価格指数(首都圏中古マンション)は前月比▲0.2%、過去1年間の上昇率は+4.6%となった(図表-6)。
1 斎藤太郎『2023年4-6月期の実質GDP~前期比0.8%(年率3.1%)を予測~』(ニッセイ基礎研究所、Weekly エコノミスト・レター、2023年7月31日)
2 斎藤太郎『2023・2024年度経済見通し-23年1-3月期GDP2次速報後改定』(ニッセイ基礎研究所、Weekly エコノミスト・レター、2023年6月8日)
2. 地価動向
地価は住宅地、商業地ともに上昇基調が継続している。国土交通省の「地価LOOKレポート(2023年第1四半期)」によると、全国80地区のうち上昇が「73」(前回71)、横ばいが「7」(前回9)、下落が「0」(前回0)で、住宅地では4期連続で23地区すべてが上昇となった(図表-7)。
同レポートでは、「住宅地では、マンション需要に引き続き堅調さが認められたことから上昇が継続。商業地では、人流の回復傾向を受け、店舗需要の回復が見られたことなどから上昇傾向が継続した」としている。
また、野村不動産ソリューションズによると、首都圏の住宅地価格(7月1日時点)は前期比+0.5%(年間3.0%)となり12期四半期連続でプラスとなった。東京都区部では都心5区を中心に価格上昇が続いているが、周辺区では横ばい地点が増加しており、全般的に価格の上昇ペースは弱まりつつある(図表-8)。
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