ASEANの貿易統計(8月号)~6月の輸出は中国向けが改善も、域内向けが落ち込み前年割れ続く

ASEANの貿易統計(8月号)~6月の輸出は中国向けが改善も、域内向けが落ち込み前年割れ続く
(写真はイメージです/PIXTA)

23年6月のASEAN主要6ヵ国の輸出は4ヵ月連続の前年割れとなる前年同月比13.4%減となりました。ゼロコロナ政策を終了した中国向け輸出は回復しつつありますが、当面は金融引き締め政策による欧米経済の減速が見込まれており、持ち直しの動きは限定的なものになる見込みです。本稿ではニッセイ基礎研究所の斉藤誠氏が、ASEAN主要6ヵ国の貿易動向について解説します。

ASEAN主要6カ国の輸出は4ヵ月連続前年割れ

2023年6月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て、通関ベース)は前年同月比13.4%減(前月:同5.0%減)と減少幅が拡大して4カ月連続の前年割れとなった(図表1)。

 

輸出の基調は昨年半ばまでコロナ禍からの経済活動の回復や商品市況の高止まりにより好調が続いたが、その後は欧米を中心とした外部環境の悪化や資源価格の軟化により増勢が鈍化し、昨年11月以降は前年割れが続いている。

 

直近はゼロコロナ政策が終了した中国向けの輸出が上向きつつあり、前月比では増加しているが、当面は金融引き締めの影響により欧米経済が減速するため持ち直しの動きは限定的となりそうだ。

 

ASEAN6カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、東南アジア向けが同22.3%減(前月:同15.6%減)、北米向けが同17.9%減(前月:同6.6%減)、EU向けが同16.0%減(前月:同2.3%減)となり、それぞれ減少幅が拡大した(図表2)。

 

一方、中国向け(同3.3%増)が改善した東アジア向けは同4.0%減(前月:同5.4%減)と減少幅が縮小した。

 

 

ベトナム

ベトナムの6月の輸出額(通関ベース、確定値)は前年同月比11.1%減(前月:同9.1%減)の294億ドルと、再び減少幅が拡大した(図表3)。輸出の基調は昨年後半までコロナ禍からの世界経済の再開や電子製品の需要拡大により増加傾向が続いたが、その後は世界経済の減速により主力のスマートフォンや電子製品、アパレル製品の出荷が振るわず減少傾向にある。

 

また輸入額は前年同月比18.0%減(前月:同20.8%減)の263億ドルと低迷した。結果として貿易収支は+30.9億ドルの黒字となり、黒字幅は前月から10.8億ドル拡大した。

 

輸出を品目別にみると、輸出全体の約2割を占める電話機・同部品が前年同月比8.8%減(前月:同28.9%減)、コンピュータ、電子製品・同部品が同3.5%減(前月:同7.8%減)となり、それぞれ減少幅が縮小した(図表4)。

 

一方、アパレル関連については履物が同25.4%減(前月:同11.8%減)、織物・衣類が同15.1%減(前月:同6.4%減)となり、大幅な減少となった。農林水産物を見ると、水産物(同23.4%減)と天然ゴム(同23.3%減)、コメ(同3.8%減)は減少したものの、野菜(同158.2%増)とコーヒー(同19.5%増)、カシューナッツ(同18.6%増)が増加するなど、品目によってばらつきが見られた。

 

輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同11.3%減(前月:同11.6%減)、地場企業が同10.1%減(前月:同2.5%減)とそれぞれ二桁減少となった。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年8月8日に公開したレポートを転載したものです。

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