契約書には“約35坪”表記→実は“約28坪”…借主「7坪分の家賃返せ!」と貸主を訴えるも、裁判所が認めなかったワケ【弁護士が判例解説】

契約書には“約35坪”表記→実は“約28坪”…借主「7坪分の家賃返せ!」と貸主を訴えるも、裁判所が認めなかったワケ【弁護士が判例解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

約30年前からアパートの一部と駐車スペースを借り、事業を営んでいた借主。しかし、最近になって賃借部分の面積を測ってみたところ、契約書に書かれている面積より2割も狭いことが判明。そこで借主は、すでに支払っていた家賃の差額(約1,320万円)返還を求めて裁判を起こすも、裁判所は借主の訴えを認めませんでした。いったいなぜか、弁護士の北村亮典氏が、実際の判例をもとに解説します。

「説明義務違反」についても明確に否定

②説明義務違反の主張について

また、上記②の説明義務違反の主張に対しては、以下のように述べて説明義務違反はなかったと判断しました。

 

・本件物件の実際の面積は契約面積の約35坪より少なくとも約7坪は狭いものと認められるが、本件賃貸借契約締結時に本件物件の契約面積が約35坪とされた経緯は明らかではなく、賃貸人が故意による虚偽告知をしたものとは認めるに足りない。

 

・次に、賃借人は、本件物件を内覧してその広さや状態等を確認し、本件物件の現況を受け入れたうえで、本件賃貸借契約を締結したものであり、契約面積は約35坪とされているものの、賃借人において本件物件の実際の面積が35坪程度あることが賃貸借契約における主要な部分であるということはできないことは前記で説示したとおりである。

 

・このような本件賃貸借契約における各事情を踏まえると、賃貸人ないし賃貸人において、賃借人に対し、契約面積は約35坪となっているものの、実際の面積はそれよりも狭いという事実を説明すべき信義則上の義務を負うものと直ちにいうことはできないし、少なくとも、上記義務違反により賃借人に不足面積分の賃料相当額の損害が生じたといえる関係にもない。

 

以上のように、裁判所は、賃貸借契約締結の経緯や賃料の決定方法、その後の更新の経緯を踏まえて、「物件の面積が実際に35坪程度あることが本件賃貸借契約の主要部分であったということはできない」と述べて、賃借人側からの返還請求を否定しました。

 

上記裁判例の理屈を踏まえると、

 

・契約時に、賃借部分の面積を実測したうえで、賃料について床面積に乗じて賃料を定めた

・契約締結後に間もなく、賃借面積が契約面積より狭小であることを賃借人側から指摘して交渉した

 

など、契約面積が賃貸借契約の主要部分と認められるような事情がある場合は、賃借人側からの既払い賃料の返還請求が認められる可能性もあると考えられます。

 

※この記事は、2023年1月4日時点の情報に基づいて書かれています。

 

 

北村 亮典

弁護士

大江・田中・大宅法律事務所

 

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※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを、北村氏が再監修のうえGGO編集部で再編集したものです。

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