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「ピザ的分業」からの緩やかな脱却
先ほど「ピザ的分業」と申し上げたチーム医療の定義ですが、もっとも有名なのは2010年に厚生労働省が出した「チーム医療検討会報告書」にあるもので、「チーム医療とは、『医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供すること』と一般的に理解されている」とされています。
もちろん、こうしたチーム医療の定義は職種間連携の必要性を明示した点で前進ともいえるのですが、他方で「ピザ的分業」を後押しする効能も生まれ、セクショナリズム的な問題もあるのではないかと考えられます。
もう1つよく知られた論として『「チーム医療」とは何か―医療とケアに生かす社会学からのアプローチ』(細田満和子、日本看護協会出版会、2012年)があります。ここではチーム医療には「専門性志向」「患者志向」「職種構成志向」「協働志向」があるものとしていて、そのうち医師事務作業補助者の活躍という話が出てきたのは「協働志向」の文脈です。
つまり、人的リソースがないなか、みんなで支えていくという関心のなかから出てきたのですが、「専門性志向」「職種構成志向」といったバランスのとり方が直近の課題となっているのではないでしょうか。
これらの議論は筆者が個人的に申していることではなく、国のなかでもそういう議論がすでにあります。例えば、2017年に出された「新たな医療の在り方を踏まえた 医師・看護師等の働き方ビジョン検討会 報告書」には、これからの働き方として「『単能工』的資格・業務に加えて『多能工』的資格・業務の推進」と明記されています。
これはまさに「ピザ的分業」と「もんじゃ焼き的分業」の話といえるでしょう。周知のとおり、医療の職種は法律で業務が限定的に定義されています。これまでは医師だけがすべてができ、あとの職種は細かく1つひとつに分解されているのですが、それだとバレーボールにおける「お見合い」のような行き届かない部分も出てきてしまうのではないでしょうか。
それならば、もうちょっとフレキシビリティがあってもいいのではという部分もあるのではないかと思います。その点で、医師事務作業補助者はいろんなところに入り込みやすいのが強みであり、とても多能工的なのではないかと思われます。
それから2021年(令和3年)9月30日の厚生労働省の通知「現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について」は医療関係者であればご覧になった方も多いと思いますが、
「資格法における職種毎の専門性を前提として各個人の能力や各医療機関の体制、医師との信頼関係も踏まえつつ、多くの医療関係職種それぞれが自らの能力を活かし、より能動的に対応できるよう(後略)」
といった記述がなされています。これを2010年度の「チーム医療通知」と比較すると、より能動的に対応できるようという部分が加わりましたし、2017年の「検討会報告書」の内容がある程度反映されていて、「チーム医療」にも柔軟な考え方が公式に取り入れられるようになってきたといえるでしょう。
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