外線着信の約32%を機会損失
当院に対するネット上の評価・口コミに表された意見を分析するなかで、「電話がつながりにくい」「電話に出ません」といった声が散見することがわかりました。当院に限らず、診療自体には満足しているものの、電話のつながりにくさが不満や不信感につながっている病院は少なくありません。
もちろん、これは病院のスタッフが怠けているといった話ではありません。スタッフはそれぞれに力を尽くしていても、患者さんからの電話に応需できない場合も少なからずあり、厳しい意見を受けているのも事実でしょう。ほかの多くの病院において、電話業務全体の「仕組み」から見直す必要があることを示唆しています。
2022年6月に代表電話への着信を定性・定量面から分析する状況調査を行ったのですが、一番の課題だと思われたのが応答率の低さでした。当院の場合、平日の多い日だと1日に1,500件を超える着信があります。しかし、平均応答率は約68%にとどまる状況。代表電話にかかってくる外線電話のうち、実に約32%を取り逃がしていることになり、これは病院経営のうえでも大きな機会損失ということになるでしょう。
また、代表電話での電話対応の内容は、予約関連34.7%、問い合わせ31.2%と患者さんからの着信が大多数を占めることが改めて確認され、文書関連5.2%、病院からの折り返し3.9%、薬剤関連2.6%、会計関連2.4%と続きました。
電話応答フローをめぐる試行錯誤
ここで当院を例にあげ、病院の電話応対の課題についてご説明しましょう。
患者さんが当院の代表電話にかけてくると、まずは10数人の電話交換手が1次対応を行います。患者さんからの内容をヒヤリングしたうえで、各診療科の計57人のメディカルクラーク(MC)へ申し送りをします。メディカルクラークは2次対応として、
電子カルテで患者情報を検索
↓
患者と通話
↓
担当医への確認
↓
電子カルテへの入力
という流れで進めます。ここまでの平均対応時間は10分30秒(最長19分・最短7分)という結果でした。
こうした電話応答には医療機関ならではの複雑な取り回しもありますが、メディカルクラークは外来診療対応を行っている場面も多く、担当医も目の前にいる患者さんの診察を行っていますので、電話転送が滞留してしまうことがしばしばです。こうしたさまざまな要因が重なって、これほどの時間を要していたのです。
これらの分析結果を踏まえて、当院ではまず予約関連の電話受付を午後だけにしました。メディカルクラークの外来診療対応は主に午前中に集中するため、予約関連の受付時間を午後だけに絞ったのです。
それから、電話交換手の増員と電話回線の増設を行いました。まず1次対応を行う電話交換手は14人から22人体制に増員し、電話回線も計41回線から計73回線に増設して様子を見ることにしましたが、結果はあまりうまくいきませんでした。1次対応の処理能力は大きく上がったのですが、2次対応のメディカルクラークへの申し送りのところで輻輳※が目立つようになりました。
※インターネット回線や電話回線にアクセスが集中すること
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