ナースコールシステムは、患者と看護師をつなぐ重要な医療インフラです。医療現場のデジタル化が進むなかで、看護師の負担軽減と効率的なケアを提供するために、いまもなお大きく変化しています。スマートフォンやIoT(モノのインターネット)の導入、データ活用の本格化により、今後どのような進化が期待されるのでしょうか。本記事では、ナースコールシステムの現状とそれに紐づく看護師の過重労働問題について、日本医療福祉設備協会・理事の花田英輔氏が解説します。
単なる呼び出し機能じゃない「ナースコール」
ナースコールとは「患者が看護師を呼び出すシステム」です。かつてのナースコールシステムは、患者がボタンを押すと、親機を通じてナースステーションに信号が届く、もしくはマイクとスピーカーで通話するといったシンプルなものでした。ところが、ナースコールシステムは2000年ごろから院内PHSと連携するようになり、看護師は病棟のどこにいても、患者の呼び出しに対応できるようになりました。
さらにナースコールシステムは単なる呼び出し機能を超えて、病院全体の情報システムと連携しています。大規模な病院では、患者の入退院情報やベッドの移動状況(転棟・転床)などと連動するのが一般的です。ナースコールシステムを工学的な視点から整理していくと、主に「入力デバイス」「制御部分」「出力デバイス」の3つの構成要素にわけて考えることができます。
入力デバイス(対患者)
患者が押すボタンには、通常のボタンと緊急ボタンの2種類があります。最近では、これに加えてさまざまなセンサーデバイスも導入されています。たとえば、転倒を検知するセンサーや離床を検知するセンサーなどです。そのほか、さまざまな病院情報システム(HIS)との連携が進んでいます。
制御部分
制御器(親機)は現在、多くの場合においてコンピュータ化されています。ナースコールはPHSやスマートフォンと連動し、電話交換機とも接続されています。さらに、病院情報システムやさまざまな医療機器とのデータ連携が進んでおり、医師が遠隔で患者の状態を確認することも可能になりました。
出力デバイス(対看護師)
かつてはランプやアラーム音などによる「ボード表示」が一般的でしたが、現在はPHSやスマートフォンなどと連携されて、出力デバイスとして機能しています。たとえば、病院情報システムに「何時何分にどのベッドからコールがあった」という情報を自動記録することも可能です。
このように見ていくと、ナースコールシステムは単なる呼び出しシステムからさまざまな用途に広がり、もはや病院全体の情報システムの一部として機能するようになっているといえるでしょう。
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国立大学法人佐賀大学 理工学部 教授(数理・情報部門)
・学歴
昭和60年 九州大学工学部情報工学科卒業
昭和62年 九州大学大学院総合理工学研究科情報システム学専攻修士課程修了
平成13年 学位取得(博士(工学)、佐賀大学)「医用電子機器の電磁波障害防止に関する研究」
・職歴
昭和62年 日本電気株式会社入社(C&C情報研究所、平成元年から情報処理金融システム事業部)
平成 4年 長崎大学総合情報処理センター助手
平成 8年 九州大学医学部附属病院助手(医療情報部)
平成14年 島根医科大学医学部附属病院助教授(医療情報部)
(平成15年に大学統合により島根大学、平成19年より職名変更により准教授)
同病院 医療情報部副部長、地域医療連携センター副センター長を併任
同大学 医学部情報ネットワークセンター副センター長を併任
平成14年 メディア教育開発センター客員助教授併任(研究開発部、平成17年度まで)
平成19年 島根大学医学部附属病院個人情報保護教育責任者
平成20年 国士舘大学理工学部非常勤講師(健康医工学系、令和元年度まで)
平成23年 NPO法人しまね医療情報ネットワーク協会理事(平成26年度まで)
平成24年 島根大学医学部附属病院データセンター副センター長を併任
平成26年 佐賀大学大学院工学系研究科教授(知能情報システム学専攻)
平成29年「九州地区の医療機関における電波利用推進協議会」座長
平成30年 佐賀大学理工学部教授(知能情報システム学科、改組による)
平成31年 佐賀大学理工学部教授(情報部門、改組による)
令和 5年 佐賀大学理工学部教授(数理・情報部門、改組による)
・所属学会(いずれも正会員)
日本音響学会、情報処理学会、日本医療情報学会、日本生体医工学会、日本遠隔医療学会、日本医療福祉設備協会(理事)、ITヘルスケア学会、電子情報通信学会、日本医療機器学会
・研究会活動等
日本生体医工学会専門別研究会「医療・福祉における電磁環境研究会」会長(平成19年度~平成24年度、平成29年度~令和4年度)、同会幹事(平成17年度~)
電子情報通信学会「ヘルスケア・医療情報通信技術研究会」専門委員(平成18年度~)、専門委員会委員長(令和2年度~令和3年度)、顧問(令和4年度~)
日本医療福祉設備協会「学術委員会」委員(平成27年度~)
電波環境協議会「医療機関における電波利用推進委員会」副委員長(平成30年度~)
第17回日本医療情報学会春季学術大会プログラム委員長(平成25年6月20日~22日、富山)
第21回日本医療情報学会春季学術大会プログラム委員長(平成29年6月1日~3日、福井)
第51回日本医療福祉設備学会副学会長(令和4年10月27日~28日、東京)
第53回日本医療福祉設備学会学会長(令和6年11月29日~30日、東京)
2024年11月にはコトセラウェビナー(https://www.cotocellar.com/seminars/list)にて「ナースコールとスマートフォン連携」に関する講演を実施した。
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