(※写真はイメージです/PIXTA)

2024年4月に施行される「医師の働き方改革」を前に、「医師事務作業補助者」が、注目を集めています。さまざまな職種が「多職種協働」を行う医療機関において、柔軟に動ける存在が必要とされているのです。現代の人手不足の医療業界において、限られた人的リソースを使い、効率的なチーム医療を行うにはどうすればよいのでしょうか? 東京医療保健大学教授の瀬戸僚馬氏が解説します。

医療DXとタスクシフトは並列で進める

ここまで医師の負担軽減を行う医師事務作業補助者の議論を紹介しつつ、「タスクシフト/シェアという人的な解決手段」とその基本的な考え方をみてきたわけですが、現状の医療機関の現場はとても人だけでカバーしきれるものでもないことは明らかでしょう。

 

「人的な解決手段」だけでなく、DXによる「技術的な解決手段」を並列的に検討しながら、現状の限られた人的リソースをどうやって活用するかという方向性を決めることが必要になります。

 

このことは実際に経済財政運営の基本方針となる「骨太の方針2022」のなかにもはっきり書かれていて、

 

「医療・介護サービスの生産性向上を図るため、タスク・シフティングや経営の大規模化・協働化を推進する。加えて、医療DXの推進を図るため、オンライン診療の活用を促進するとともに、AIホスピタルの推進及び実装に向け取り組む」

 

とあります。つまり人の役割分担を病院内でも、そして地域内でも見直していくことが大事であり、こうした議論のなかでようやくAIホスピタルという言葉も出てくるのです。だからこそ、「人間同士の役割分担」と「機械やシステムを通じた役割分担」を並列的に、そして「もんじゃ焼き的」に考えていこうという話になります。

 

これから起きるのは医療DXによる「タスクシフト」

今後、IoTやビッグデータ、AIなどの活用が本格的に進んでいくと、どのように業務が変わるかをいま改めて考えていかないといけないと思います。

 

いま話題を集めているChatGPTのような生成系AIももちろん大切なのですが、筆者個人の感覚だと1番大きいのは医療DXのメインの担い手となる新人層でしょう。2000年代生まれのジェネレーションZ(Z世代)が入ってくるのはあと数年後です。2030年に入ると、研修医の先生方も含めてZ世代になるわけですから。

 

筆者が勤務する大学でも文部科学省の医療DX補助事業を適用するかたちで、ロボット技術やIoTを駆使した新しい医療機器類が入ってきています。大学教育の場においてもかなりロボット化が進んでいるわけですが、実際にこれらのものが普及していくと、なんでもかんでも人が入力をするという仕事からセンサーを使う仕事へと変わっていきますし、その判断も、ある程度機械に支援してもらえるようになるでしょう。

 

そうしたことで、なにが起きるかというと、「人から機械へ移る」だけでなく、実はタスクシフトも進むのではないかと考えます。たとえばスマートグラスの映像による視覚拡張などを用いれば、いままで医師がやってた業務をほかの職種に移していく将来がやってくるかもしれません。

 

とにかくZ世代と職場で一緒になるとき、これからの新人層は非常にデジタルのハードルが下がってきていることは意識しておく必要があるでしょう。よく言われるように、Z世代に価値観を押し付けても浸透しないため、既存の業務のモデルを磨くだけでなく、「みんなで楽になる」というシェアードバリュー(Shared Value)を積極的に伝えていくのもポイントになるでしょう。

 

ここまで、医師事務作業補助者の専門性として大変柔軟性が高いアメーバのような強みがあると論じてきました。その強みに自覚的になるだけでなく、医療DXを並列で考えることが大切だということです。

 

医療DXを利用することでいままでできなかった業務を手がけてみたり、あるいはこれまでの業務を思い切って手放したりといったことも具体的に検討していくのも大事な論点だと考えます。

 

※出所:筆者作成

[図表4]医療DX補助事業を通じて見据える将来とは何か ※出所:筆者作成

 

 

瀬戸 僚馬

東京医療保健大学教授

博士(医療福祉経営学) / 上級医療情報技師育成指導者 / 診療情報管理士 / 保健師・看護師

 

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