(写真はイメージです/PIXTA)

福岡のオフィス市場は、オフィス需要がコロナ禍で受けたダメージから回復し空室率と成約賃料は概ね横ばいで推移していたが、今年に入り、新規オフィスビル供給の増加を受けて空室率は再び上昇に転じている。本稿では、ニッセイ基礎研究所の吉田 資氏が、福岡のオフィス市況を概観した上で2027年までの賃料予測を行う。

1.福岡オフィス市場の現況

 

1-1. 空室率および賃料の動向


三幸エステートによると、福岡市の空室率(2023年5月時点)は、新規大規模オフィスビルが空室を残して竣工した影響により5.2%(前年比+1.2%)に上昇した(図表-1)。

 

福岡市の空室率を規模1別にみると、「大規模4.5%(前年比+1.7%)」と「大型4.8%(同+1.7%)」が上昇する一方、「中型6.6%(同▲0.2%)」と「小型7.2%(同▲0.2%)」がわずかに低下し、規模間の格差が縮小した(図表-2)。テレワークの普及や働き方の変化等に伴うワークプレイスの見直しが進むなか、まとまった面積の募集では、入居テナントの決定に時間を要する事例が増えている。

 

 

 

 

全国主要都市では、オフィス床の解約や事業拠点の一部閉鎖などに伴い、空室面積が増加傾向にあり、成約賃料にも頭打ち感がみられる。2022年下期の福岡市の成約賃料は、前期比▲3.3%、前年同期比▲2.1%となった(図表-3)。

 

 

 

2022年の空室率と成約賃料の動き(前年比)を主要都市で比較すると、空室率は、上昇と低下で分かれる結果となった。また、成約賃料は、札幌市が上昇、東京都心5区が下落、その他の都市は概ね横ばいで、福岡市の空室率と賃料はともに前年とほぼ変わらずであった(図表-4)。


賃料と空室率の関係を表した福岡市の賃料サイクル2は、2012 年下期を起点に「空室率低下・賃料上昇」の局面が続いていたが、2020 年下期以降「空室率上昇・賃料上昇」局面を経て、現在は「空室率上昇・賃料下落」の局面に向かいつつある(図表-5)。

 

 

 


1 三幸エステートの定義による。大規模ビルは基準階面積200坪以上、大型は同100~200坪未満、中型は同50~100坪未満、小型は同20~50坪未満。
2 賃料サイクルとは、縦軸に賃料、横軸に空室率をプロットした循環図。通常、(1)空室率低下・賃料上昇→(2)空室率上昇・賃料上昇→(3)空室率上昇・賃料下落→(4)空室率低下・賃料下落、と時計周りに動く。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年6月21日に公開したレポートを転載したものです。

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