「200万円の利益」を出したのに「1円も儲かっていない」と評価されてしまうのはなぜ? 知らないと怖い「“費用”と“投資”の違い」【公認会計士が解説】

「200万円の利益」を出したのに「1円も儲かっていない」と評価されてしまうのはなぜ? 知らないと怖い「“費用”と“投資”の違い」【公認会計士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

会社が「利益を出している」ということと、「儲かっている」ということは大きく異なります。その区別がわからないと、気付かないうちに損をする可能性があります。重要なのは、「費用」と「投資」の区別を明確に理解することです。『管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング』(PHP研究所)の著者で「IT」に精通した公認会計士である金子智朗氏が、会社の利益の最大化という見地から解説します。

投資の評価は「ヨコの視点」で

ここで、利益とは何なのかをあらためて考えてみましょう。

 

[図表4]を見てください。

 

[図表4]タテの視点とヨコの視点

 

会社では、同図表の仕事Aから仕事Dのように、いろいろな仕事が同時並行的に行われています。

 

このとき、たとえば「x2年度」の利益とは、「x2年度」にたまたま帰属(きぞく)した複数の仕事の利益を1年という細長いスリットで切り取って集計したものです。私はこれを、「タテの視点」と呼んでいます。

 

なぜ、タテの視点で切り取るかというと、それは「利益とは何に使われるものか」ということと密接に関係しています。

 

利益の制度的な意味は税金計算の基準値と配当計算の基準値です。税金は1年に1回計算して納めるものです。配当は、現在の法制度においては何回でもできるようになっていますが、これも元々は1年に1回行うものでした。

 

税金も配当も1年に1回行うものだから、その基準値である利益は、1年というスリットでタテに切り取って集計する必要があるのです。

 

もし、費用の効果を考えたいならば、利益で考えても大きな間違いはしません。費用はキャッシュ・アウトの効果が原則として1年で完結するからです。

 

しかし、投資の効果は利益では判断できません。投資はキャッシュ・アウトの効果が複数年にわたるからです。複数年にわたるものを1年という断片で切り取っても、その全体像が分かるわけがありません。

 

本ケースでも、最初の2年間を見る限りでは利益が出ています。しかし、投資としては儲かりません。投資を評価する場合は、[図表4]の、いわば「ヨコの視点」で見る必要があります。

 

ヨコの視点で見るとは、年度という人為的な区切りを飛び越えて、その投資の効果が及ぶ年数全体にわたって、キャッシュで評価するということです。

 

 

金子 智朗

ブライトワイズコンサルティング合同会社 代表

公認会計士

 

管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング

管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング

金子 智朗

PHP研究所

その仕事は外注すべきか、値下げすべきか、この事業から撤退すべきか。 合理的、戦略的に判断をくだす「数字で考える」トレーニング

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