投資の評価は「ヨコの視点」で
ここで、利益とは何なのかをあらためて考えてみましょう。
[図表4]を見てください。
会社では、同図表の仕事Aから仕事Dのように、いろいろな仕事が同時並行的に行われています。
このとき、たとえば「x2年度」の利益とは、「x2年度」にたまたま帰属(きぞく)した複数の仕事の利益を1年という細長いスリットで切り取って集計したものです。私はこれを、「タテの視点」と呼んでいます。
なぜ、タテの視点で切り取るかというと、それは「利益とは何に使われるものか」ということと密接に関係しています。
利益の制度的な意味は税金計算の基準値と配当計算の基準値です。税金は1年に1回計算して納めるものです。配当は、現在の法制度においては何回でもできるようになっていますが、これも元々は1年に1回行うものでした。
税金も配当も1年に1回行うものだから、その基準値である利益は、1年というスリットでタテに切り取って集計する必要があるのです。
もし、費用の効果を考えたいならば、利益で考えても大きな間違いはしません。費用はキャッシュ・アウトの効果が原則として1年で完結するからです。
しかし、投資の効果は利益では判断できません。投資はキャッシュ・アウトの効果が複数年にわたるからです。複数年にわたるものを1年という断片で切り取っても、その全体像が分かるわけがありません。
本ケースでも、最初の2年間を見る限りでは利益が出ています。しかし、投資としては儲かりません。投資を評価する場合は、[図表4]の、いわば「ヨコの視点」で見る必要があります。
ヨコの視点で見るとは、年度という人為的な区切りを飛び越えて、その投資の効果が及ぶ年数全体にわたって、キャッシュで評価するということです。
金子 智朗
ブライトワイズコンサルティング合同会社 代表
公認会計士