「投資」の評価をするには税金は無視できない
◆「よく分からないし、大した影響はないだろう」では済まない
ビジネスにおける投資の評価とは「使ったお金を上回るお金を取り戻せるか」を評価することです。投資の効果はすべてお金、すなわちキャッシュで見積もります。
キャッシュで見積もる際のポイントは、税金の影響を考慮することです。
税金などというと、何だか難しそうに感じるかもしれません。そう思うのは当然です。実は筆者もそうでした。
筆者の社会人のスタートは、一般企業の情報システム部門でした。そこではシステム投資の評価が重要な仕事の一つでした。私も担当役員などから、「そんな多額のシステム投資をして、どれだけの投資対効果があるんだね?」とよく聞かれていました。
そのとき、税金の影響を考慮していたかと言われると、正直なところ、一度もしたことはありませんでした。
その理由は2つです。
まず、税金のことがよく分かっていなかったからです。分かっていないことは考慮のしようがありません。
これは投資の評価にありがちな話です。投資の評価をする部署に、会計や税務に詳しい人はほとんどいません。
投資の評価をするのは、たとえばシステム投資であれば情報システム部門、製造業における設備投資であれば製造部門だと思います。そういうところに、会計や税務に明るい人は、普通はいません。
もう一つの理由は、税金なんか考慮しなくても大した影響はないだろうという勝手な思い込みです。
これは、分かっていない人にありがちな思考です。分からないことは、考慮しなくてもきっと大したことはないと決め込んでしまうのです。一種の自己防衛反応です。
しかし、大したことはあるのです。利益に対して課される法人税などの税率は約30%もあります。これを考慮しなくていいわけがありません。
考慮するとしないとでは、計算結果が大きく変わってきます。
減価償却費はキャッシュ的にはプラス
税金の影響を考慮してキャッシュの増減を見積もるための基本ルールは次の通りです。
まず、それぞれの要素(投資額やコスト削減額など)について、それ自身のキャッシュの増減額を考えます。
次に、その要素が利益に影響を与えるかどうかを考えます。利益に影響が出る場合は、その税率相当分の税金の増減が起こります。
税金の増減は言うまでもなくキャッシュの増減をもたらしますから、それを最初に見積もったキャッシュの増減額に反映させます。