従業員に「汗水垂らして一生懸命仕事しろ!」は間違い!? 「コスト削減」のため大量生産すると“大損”してしまうワケ【公認会計士が解説】

従業員に「汗水垂らして一生懸命仕事しろ!」は間違い!? 「コスト削減」のため大量生産すると“大損”してしまうワケ【公認会計士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

経営者・ビジネスマンにとって「会社の数字を意識して動けるか」は非常に重要ですが、それは「決算書類を読める」こととはまったく違います。本記事では、「IT」に精通した公認会計士で、会社の利益の最大化という見地からの「会社の数字」の読み方を提唱する金子智朗氏が、著書『管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング』(PHP研究所)から、「会社の数字」の合理的な読み方を解説します。

コストを下げるには大量生産をすればいい?

◆「大量生産でコストが下がる」と言われる理由

今までにない製品が世に出たとき、最初の頃は非常に高価であることが普通です。たとえば、今では当たり前になった液晶テレビも、出始めの頃は非常に高く、なかなか手が出なかったものです。

 

当時に比べれば、液晶テレビも大分安くなりました。その理由としてよく言われるのが、液晶テレビが普及し大量生産されるようになったので、コストが下がったという説明です。

 

大量生産されると、なぜコストが下がるのでしょうか? そして、本当にコストは下がっているのでしょうか?

 

大量生産によってコストが下がる理由は、費用を「変動費」と「固定費」に分けることによって初めて理解できます。

 

次のケースを考えてみてください。

 

【演習問題】

1個当たりの製造コストが100円の製品があります。その内訳は、変動費が40円、固定費が60円です。変動費は製品に使われる部品の費用、固定費は生産設備などにかかる費用などです。

 

従来はこの製品を年1万個製造していましたが、それを年2万個にしたとしましょう。その場合、製品のコストはどうなるでしょうか?

 

まず、変動費は製品に使われる部品の費用などですから、製品を何個作ろうとも1個当たり40円のままです。

 

一方、固定費は総額が固定です。1個当たりのコストに含まれる固定費60円は年1万個製造している前提での金額ですから、1年間の固定費の総額は60円×1万個=60万円です。これが固定です。

 

したがって、製造量が年2万個になれば、1個当たりの固定費は60 万円÷2万個=30円になります。製造量が倍になったので、固定費の1個当たり負担額が半分になったと考えてもいいでしょう。

 

結局、1個当たりのコストは40円+30円=70円になります。年1万個製造していたときのコストは1個当たり100円でしたから、コストが下がりました。

 

これが、大量生産によってコストが下がる理由です。大量生産をすると、製品1個当たりが負担すべき固定費が薄まるため、1個当たりコストが下がっていくのです。

 

大量生産をしても製品1個当たりの変動費は変わりませんから、1個当たりのコストは製造量に対して[図表1]のように変化します。

 

[図表1]量産効果

 

究極的には1個当たりの固定費負担額は限りなく0円に近付いていきますから、製品1個当たりのコストは限りなく変動費に近付いていくということです。

 

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管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング

管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング

金子 智朗

PHP研究所

その仕事は外注すべきか、値下げすべきか、この事業から撤退すべきか。 合理的、戦略的に判断をくだす「数字で考える」トレーニング

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