キャッシュの動きと「減価償却費」の関係性
「儲かるでしょうか?」と聞かれて、みなさんはどのように考えるでしょうか?
そもそも、「儲かる」とはどういうことでしょうか。
多くの人は、「儲かるとは利益が出ること」と答えます。では、本ケースの利益をちょっと計算してみましょう。
最初の2年間の利益は[図表2]のようになります。
これを見ると、利益が出ています。ということは、「2年目までは儲かる」と言えるのでしょうか?
みなさんは、どういうときに「儲かった」と思いますか?
たとえば、300円で宝くじを買って、それ以上の金額が当たったようなときに「儲かった」と思うのではないでしょうか。
これが「儲かる」の基本です。つまり、使ったお金を上回るお金を取り戻した状態を「儲かった」と言うのです。
企業においても同じです。使ったキャッシュを上回るキャッシュを取り戻す場合に「儲かる」と言うのです。あくまでも、お金、キャッシュです。
では、あらためて本ケースをキャッシュで考えてみましょう。
まず、システムを購入したときに1億円のキャッシュが出ていきます。その後、売上高を得ることによってキャッシュが増加します。一方、ランニングコストはキャッシュを減少させます。
問題は減価償却費です。
減価償却費というのは、システムの取得のために既にキャッシュ・アウトした1億円を、その後何年間かにわたって費用として分割計上するものです。
したがって、減価償却費という費用が計上されても、キャッシュが出ていくわけではありません。キャッシュの支払いは取得時にすべて済んでいるのです。
ということは、このシステム導入による5年間のキャッシュの動きは[図表3]のようになります。
合計を見てください。5年間で取り戻す正味のキャッシュは9,800万円です。
1億円のキャッシュを使って9,800万円のキャッシュしか取り戻さないわけですから、このシステム導入によるサービスは儲からないということになります。