(※写真はイメージです/PIXTA)

相続財産にはプラスのものもあればマイナスもあります。どちらにしても手続きは簡単とはいえず、期限があるものも。親が負債まみれなら、当然、相続は回避したいところ。その選択肢のひとつが、相続放棄です。自分では問題ないと思っていても、意外な落とし穴があったりもして…。そこで、実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、相続放棄における注意点について、藤井貴之弁護士に解説していただきました。

相続放棄をするはずが、なぜか負の相続をする流れに…

相談者のアオイさん(女性・仮名)は父親が死去し、相続の権利を有しています。ただ、相続は申述書提出期限の3ヵ月以内に放棄するつもりです。

 

そこで諸々の手続きを進めていましたが、ひとつ不安なことがあります。

 

死後に父親への請求書があり、その支払いを自身の預金から引き出し対処したのです。請求は父が亡くなってから相談者が相続放棄を決めるまでに発生したものなので、「問題ないだろう」と判断したのです。

 

請求の内訳は、固定資産税、借地の土地代、葬儀代、病院の入院費、老人ホーム代など。支払は、父の預金から引き出すことなく、子である相談者が補填しました。

 

念の為、インターネットで調べてみると目が点になりました。

 

故人の負債を支払う行為は、故人の財産を自分の財産とする意思表示とみなされる単純承認にあたり、相続放棄ができない可能性があると知ったのです。

 

そこで不安になり、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の3点について相談しました。

 

1.父に対する請求の支払を行ったことで相続放棄ができなくなってしまうのか。

2.父に対する請求の支払を行った際の領収書の提出などは、相続放棄申述書と一緒に提出すれば良いのか。

3.相続放棄申述書の提出後、裁判所が父の資産・負債等について調査し、問題になるようなことはあるのか。

相続人の財産からの負債の支払は“問題ありません”

相続人固有の財産による被相続人の債務の支払は、法定単純承認事由にあたるか。

相続人が相続しないことを選択し、「相続放棄(申述)」を利用するためには、法定単純承認事由がないことが必要になります。このうち、実務上よく問題になる法定単純承認事由が相続財産の処分です。

 

アオイさんからの質問は、故人の負債を支払う行為が法定単純承認に該当しないかどうかというものですが、相続人固有の財産によって被相続人の債務の弁済をした行為が相続財産の処分に該当しないことは、既に審判例があります。

 

したがって、「相続放棄(申述)」することは可能です。

 

相続放棄(申述)に必要な書類とは

相続放棄(申述)に際して提出しなければならない必要書類は、相続放棄の申述書、被相続人の住民票除票、申述人の戸籍謄本、被相続人の戸籍謄本などです。

 

これに加えて申述人が被相続人の代襲相続人、直系尊属、兄弟姉妹などである場合には、被相続人の出生時から死亡までの全ての戸籍謄本などを取り寄せる必要があります。

 

相続放棄の申述書には、申述人の情報(本籍、住所、氏名、生年月日、職業、連絡先、被相続人との関係)被相続人の情報(本籍、最後の住所、氏名、死亡日、死亡当時の職業など)のほか、相続開始を知った日、相続放棄をする理由、相続財産の概略を記載する必要があります。

 

ただし、被相続人の財産目録を作成したり、被相続人の死亡後から相続放棄(申述)までの資産・負債の変動を報告したりする必要はなく、被相続人に対する請求の支払を行った際の領収書なども提出する必要はありません。

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