中国がもつ欧米列強への「積年の恨み」
次の記事を読むと、すでにニクソン訪中から50年が経過していることと、先頃(2022年10月16日)に開かれた中国共産党の第20回党大会で習近平が絶対的地位を確立したこと、ロシア・ウクライナ戦争が勃発(2022年2月25日)していることは、50年というサイクルに符合(ふごう)していて、不思議に思うと同時に歴史の重みを感じる。
「ニクソン訪中50年 米は自省」(日経新聞切り抜き 2022年2月18日)
これは、ニクソン大統領(当時)が中国を訪問してから21日でちょうど50年になるという記事である。「中国は米国が期待していた民主化を顧みず、巨大な経済力と軍事力を背景に発言力を高める『唯一の競争相手』になっており、ゆえに米国は自省している」と書かれている。
中国政府は、このニクソン訪中をお膳立てしたキッシンジャー氏を今なお、協調と共存のビジョンを持つ賢明な政治家と讃(たた)えているという。しかし、キッシンジャー氏は1971年に米中関係がいずれ悪化するとの見方を側近に示していたそうだ。
中国は2008年の世界金融危機で米国が力を落としたと判断し、2016年ごろから「100年に1度の大変革期」が訪れたと主張するようになった。それは、19世紀末、欧州列強に主権を明け渡すよう強いられた中国の指導者たちの「(世界は)3000年間、見られなかったほどの大変革期」にあるという嘆きが、主張の下敷きになっているという。
キッシンジャー氏は回顧録のなかで、長年米中対立の争点となってきた台湾問題は周恩来(しゅうおんらい)との会談の冒頭、少し話題になった程度だったと書いているそうだ。だが、機密解除となった記録によれば、周恩来は冒頭からキッシンジャー氏に対し、台湾への関与をやめるよう強く迫り、台湾問題がまとまらなければ、米国との関係正常化はできないとまで言い切ったという。
こうした記事を読むと、単純に米中のどちらが悪いということではなく、歴史を振り返れば、中国は19世紀から欧米列強の脅威(きょうい)に晒され、その恨みが沸々(ふつふつ)といまだに出てきているというのが実態ではないだろうか。
そして、2月13日の「米、37年ぶりフィジー訪問」という記事を見てみると、ブリンケン米国務長官が人口約90万人のフィジーに足を運んだ背景には、ロシアによるウクライナ侵攻の懸念が急速に高まるなかで、南太平洋地域で台頭する中国への警戒感があるとしている。
この記事もまた、中国の台頭によって従来のアメリカ一強の枠組みが大きく変わることを示唆しているように感じた。
渡部 清二
複眼経済塾
代表取締役塾長
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