党大会で発表された習近平の“功績”
5年に1度開かれる中国共産党の第20回党大会が2022年10月16日に開幕し、習近平(しゅうきんぺい)総書記(国家主席)が登場する姿を多くの人がテレビの報道で見たことだろう。にこやかに手を振りながら自席に着き、党の運営方針をまとめた中央委員会報告(活動報告)を発表する様子は、自信に満ちているようだった。
過去5年を振り返りながら報告された内容の要旨を箇条書きにすると、以下のようになる。
①小康社会(ややゆとりのある社会)の全面的完成を推進した。
②中国共産党の創立100年と中華人民共和国の建国70年を盛大に祝い、第3の「歴史決議」を決定した。
③「ゼロコロナ」を堅持し、新型コロナウイルス感染症対策と経済・社会発展の両立で成果を収めた。
④台湾問題については武力の行使を放棄することなく、必要なあらゆる措置を取るという選択肢を保留する。
①では脱貧困などの成果を挙げ、「我々は団結して人民を率い、長きにわたって解決できなかった難題を解決した」と強調した。
②では、この第20回党大会に先立って12日に閉幕していた中国共産党の重要会議、第19期中央委員会第7回全体会議(7中全会)において、毛沢東(もうたくとう)、鄧小平(とうしょうへい)の時代に続く第3の「歴史決議」が採択され、習近平が引き続き絶対的な地位に就くことが確認された。
④では平和統一に最大限努力するが、米国など台湾支持を表明している各国を念頭に、台湾統一の強い意思に変わりがないことを訴えた。
習氏の絶対的地位の確認は7中全会で判明していたことで、その際、建国の父・毛沢東が務めた最高位「党主席」の復活には触れなかったものの、中国共産党創立100年の式典(2021年7月1日)において、かつて毛沢東が着ていた人民服と同様の薄いグレーの人民服で会場に現れた姿は印象的だった。
記事の切り抜きが示す習近平政権の「危うさ」
習近平指導部は、この党大会を経て異例の3期目に入ったが、振り返ってみれば同指導部が誕生した2012年の中国の名目GDP(国内総生産)は米国の5割を上回った程度だった。同指導部は、この数値を米国の8割まで拡大することを目標にしてきたものの、現在は、目標値5.5%はおろか3%の達成も危ういとみられている。
したがって、中国経済の構造改革は待ったなしの状況と思えるし、人口減少と高齢化、不動産バブルの崩壊、国内の格差拡大、失業率の拡大、新疆(しんきょう)ウイグル自治区の問題等々を考えると、中国が初めて新疆ウイグル自治区で原子力爆弾の実験に成功した記念日に第20回共産党大会が開幕されたことに、まず違和感を覚える。
そしてそれと同時に、習近平氏への過度の権力集中、同指導部の政治姿勢と現実の乖離(かいり)に危うさを感じる。また、以下に挙げたこれまでの指標ノートのコメント、日経新聞の切り抜きからも同様の印象を受ける。
■「中国国勢調査人口14億1177万人」(指標ノート 2021年5月11日)
このコメントを書き写した日経新聞には「20年出生2割減」という見出しが続いていて、要は人口が減っているということだ。一人っ子政策を進めていた国が、一転して「人口×生産性=国力」という方針で、同月31日に「中国共産党第3子容認」と発表していることに、中国政府の少子高齢化問題への対応の遅さがうかがえる。