東京五輪が「米中対立」構造を鮮明にした
■「東京五輪開幕 中国共産党大会100周年」(指標ノート 2021年7月23日)
東京オリンピック・パラリンピックは当初、2020年に開催される予定だった。それが新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大するなか、2020年3月に1年程度の延期が決定し、結局、翌2021年夏に開催されることになった。しかし、コロナ禍の影響で2021年の開催も危ぶまれ、開催の延期や中止を主張する声もあった。
こうした状況下、私は開催1年前から東京オリンピック・パラリンピックは2021年7月23日に必ず開催されると信じて疑わなかった。
その根拠は「7月23日」という日付で、この日は中国共産党第一次全国代表大会が開催された1921年7月23日からぴったり100周年に当たる日だからであり、それに先立ち7月1日に「中国共産党大会100周年」の記念式典が開催された。
もしコロナ禍の影響で、同日開催の東京オリンピック・パラリンピックが中止になれば、コロナ禍に打ち勝った中国とコロナ禍に負けた欧米勢という構図が世界に見えてしまうからだ。東京オリンピック・パラリンピックは平和の祭典ではなく、米中対立の構造をさらに鮮明にしたと思っている。
「高所得国」と謳う陰で貧困にあえぐ国民
■「中国冬季スポーツ『3億人計画』」(日経新聞切り抜き 2022年2月17日)
北京冬季五輪(2022年2月4日〜2月20日)を契機に、中国政府が国内の冬季スポーツ人口を3億人にする計画を打ち出し、2025年までに観光を含め、1兆元(約18兆円)規模の市場に発展させる目標を掲げたというのが、この記事だ。
ただし、冬季スポーツの普及に躍起(やっき)になっているとはいえ、スキーやスノーボードなどの道具代が高いため、この計画の狙いにある五輪後に冬季スポーツのブームを作るということは遠のくとも報じていた。
一方で、3月1日の「中国『高所得国』入り目前」という記事を見てみると、中国の1人当たりのGNI(名目国民総所得)は1万2438ドル(約143万円)となっており、世界銀行が定めている高所得国の基準(1万2695ドル超)に迫っているという。
この2つの記事を併せて考えると、中国は全体でみれば高所得国になったとはいえ、まだ一般的には、冬季スポーツができるほど豊かになっていないということだ。
それを裏付けているのが4月1日の「中国離婚件数43%減」という見出しの記事である。離婚件数が大幅に減った主因は、衝動的な離婚をなくすために「冷静期間」を設け、2021年1月に施行した民法典に基づき、離婚手続きの申請後、30日以内は取り下げられるようにしたからだとしている。
だが記事の続きを読むと、「離婚後の暮らしや子どもの将来への不安が、離婚をためらう要因とみられる。都市部の新規雇用は今なお新型コロナの感染が広がる前の水準を下回る。生活コストが高騰し夫婦共働きが一般的ななか、離婚後も同じ生活水準を保つのが難しい人は少なくない」とも報じており、一般的に豊かさが実感できていないことを示している。